【島人の目】子供は親のモノではない


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 最近ヨーロッパの移民イスラム教徒の家庭で親が娘を殺害したり虐待する事件が多発している。ここイタリアでも象徴的な事件が起こった。
 20歳のパキスタン人の娘が父親にのどをかき切られて殺害され、遺体を庭に埋められた。犯行動機は娘が父親の意向に背いて「西洋風」に自由に生きようとし、揚げ句に「キリスト教徒の」イタリア人若者と付き合っている、というものだった。

 凶悪事件ばかりではなく、親が娘に暴力を振るったり、イタリア人の友人をつくることを禁止したり、親の決めた相手との結婚を強制したりという横暴が次々に明るみに出ている。移民社会におけるそうした女性虐待の流れの一つで、イタリア国内だけで年間少なくとも2千件の強制未成年者結婚が行われていると推定されている。この場合の犠牲者も全て女性である。
 とっぴに聞こえるかもしれないが、僕はそうした痛ましい事件を知る度にわが日本を思う。今の日本では考えられないことだが、娘を物のように扱って遊郭に売り飛ばしたり、強制的に労働させたり結婚させたりしたのは、つい最近までわが国でも普通にあったことである。
 幸い日本人は親の思いのままに子供を扱う不幸な文化を捨てたが、今イタリアの移民社会で起こっていることは、どこかで日本の過去にもつながっている。自爆テロを起こすイスラム過激派の行動が、かつての神風特攻隊とつながっているように…。
 ちなみに欧米のメディアでは自爆テロをずばり「カミカゼ」と規定し、そう報道するのである。
(仲宗根雅則 イタリア在住、映像ドキュメンタリー作家)