【キラリ大地で】アメリカ/映画「母の道、娘の選択」 NY女性記者表彰・我謝京子さん監督


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我謝京子さん

希望と選択 背景に努力
 ニューヨーク(NY)の女性記者団体が優れた女性ジャーナリストを表彰する「フロントページ賞」を昨年11月に受賞した我謝京子さん(47)=東京都出身=のドキュメンタリー映画「母の道、娘の選択」が桜坂劇場(3月12日~17日)で上映されることがこのほど決まった。上映に当たり、我謝さんが来県し、会場でのトークも予定されている。

 NYでロイター通信の経済記者をしている我謝さんは監督としての厳しい表情だけでなく、優しい笑顔とエネルギーに満ちあふれた国際ジャーナリストの顔を持ち合わせる。
 大学を卒業し1985年にテレビ東京に入社。当時女性の採用は少なかったが取材班として機材を持ち飛び回る職場に配属された。
 過労と病に見舞われる中娘を授かり、「母」として仕事と子どもへの愛の両立に励んだ。96年のペルー大使公邸人質事件取材も経験、銃撃戦や爆発を間近で見た。死の恐怖におびえながらも報道の使命感でしっかりマイクを握った。同時に日本に残してきた4歳の娘のことが気になり、親としての責任と葛藤が頭をよぎり、必死で身を守った。
 有能な記者としてますます仕事の量が増え国内外を駆け回ると、子どもとの時間が削られる。6歳になった娘との対話の必要性を強く感じ、現場から退いた。
 その後NYでロイターに勤めた2001年から、娘と2人のニューヨーク生活が始まった。仕事にも慣れ、娘も学校に慣れ、順風に乗った矢先に米中枢同時テロに見舞われた。
 住まいがワールドトレードセンターと目と鼻の先だったのでアパートには入れず、着の身着のまま親子で路頭に迷った。「友人に支えられ、親子の絆がより強まった」と過去を振り返る。受賞作の「母の道、娘の選択」は荒波を生き抜く視点から生まれた作品といえる。
 映画は、伝統的な日本の生き方を母親から伝授された我謝さん。その枠の中と外に生きる本人、娘の生き抜く希望と選択の自由、3世代を屈託のない語りでつづる。さらに日本と、多国籍集団の中心地NYとの文化のギャップを浮き彫りにしながら葛藤を描く。
 外国人の持つ典型的な「ニッポンの女性」に対する偏見を覆し、NYで活躍している日本人女性の努力、才能、哲学、そして並々ならぬ努力と前向きな姿勢がにじみ出ている。社会のトップレベルの人も底辺を支える人も乗り越えなければいけない大きな壁があることを再認識するだろう。(比嘉良治通信員)