【島人の目】日伊、ダメ首相が行く


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 ベルルスコーニ伊首相が未成年者買春容疑で起訴された。
 これまで多くの失言やスキャンダルで物議を醸してきた男だが、持ち前の明るさと機知と権謀術策で難局を逃れてきた。が、今回の少女買春スキャンダルは様相が違う。国民は厳しい目を向けていて、特に女性の怒りは大きい。今月半ばには首都ローマを含む230の街で女性による糾弾集会が一斉に行われ、参加者は優に100万人を超えた。同じ日にはフランスでも抗議デモが起きている。

 イタリア内外から厳しく指弾されている同氏だが、僕はそれらの真っ当な非難に同調しながら、一方で彼の存在をとても面白く思って眺めてもいる。
 ほとんどノーテンキとも言える脇の甘さで各方面から攻撃されながらも、彼は1994年以来3回も首相になり、在任期間の合計は8年を超えて、イタリア憲政史上で戦後最長になった。
 国民は時にはあきれ、怒ったりしながらも、まるでイタリア人気質のカタマリみたいな奔放で明るい性格の男を愛し支持し続けてきた。また彼を首相の座から引きずり下ろしても、代わりの人材が皆無、というイタリア政界事情も長期政権維持につながった。
 人材不足という点では日本の政治環境もよく似ているが、わが国の現職総理には、イタリア首相の政治手腕もカリスマ性も人間的な面白みもないばかりか、失言癖でさえ国際的にも話題になるような大放言の類ではなく、ベルルスコーニのそれと比較すると、いかにも器の小さいちまちましたものだからがっかりである。(仲宗根雅則、イタリア在住、映像ドキュメンタリー作家)