【島人の目】ああ情けない


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 昨年帰郷した際、新基地県内移設反対を訴え、闘い続ける熱き仲間たちとともにいくつもの集会、討論会、シンポジウムなどに参加した。
 印象的だったのは、鳩山前首相が来県した際の県庁前「待ち伏せ集会」。仲間の一人が徹夜して作った派手な垂れ幕を掲げて待ち構えた。

 そして、現れた鳩山さんが乗った公用車は、行きも帰りも逃げるように猛スピードで消えて行った。その車の両脇には、2台の車がつき、ボディーガードらが車窓から半身を乗り出す派手なパフォーマンスで防御の体。
 鳩山さんの車には顔が見えないようにカーテンが掛かっていた。沖縄県民に堂々と顔を見せられないのは、どこかやましくバツが悪いからだと思うが、これが一国のトップの取るべき態度なのか。稚拙さが実に情けなかった。
 ある大学での討論会。辺野古の方々の涙ながらに訴える切実な思いが胸に響いた。一方、会場の一角に陣取っている一団から発せられる「早く鉄軌道を」の声。
 辺野古に新基地を建設し、返還された普天間飛行場跡に鉄道を敷くとのこと。そして彼らが支援する議員は言った。「辺野古の住民には、あと15年我慢してもらう」と。一部の人の利権のために辺野古の住民が、なぜ我慢しなければならないのか。心ない言葉が情けなかった。
 さて「抑止力は方便だった」と放言してしまった鳩山前首相。普天間飛行場の辺野古移設を正当化するためにその場しのぎの発言をしたことは大きな問題であり県民を愚弄(ぐろう)するもの。
 しかし、それよりアメリカの顔色をうかがう官僚らに振り回され、民主主義国家のリーダーであるにもかかわらず結局、官僚らの意のままに屈せざるを得なかったことは情けない。
 思えば9カ月前、カーテンの向こうで県民に顔向けできなかった鳩山さんの情けなさにも納得がいく。官僚利権根絶を公約に掲げた民主党政権がいとも簡単に公約をないがしろにし、民意を欺く。国民が政治不信に陥るのはもっともなことではないか。ああー情けない。
 菅直人首相もオバマ大統領との間で辺野古への基地建設を約束した。またもや新基地建設の利権にあずかろうと躍起になる人が出てくるだろう。餌食にされる沖縄。ああー情けない。
(鈴木多美子、米バージニア州通信員)