「沖縄の精神学んだ」 玉代勢ダーシーさん、母の人生基に小説


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 【レスブリッジ2日新垣毅】沖縄戦を体験し、戦後はカナダに移住して琉舞に身をささげる母の人生をモチーフに、沖縄で受け継がれてきた魂、平和や美を求める心を小説に描いた2世がいる。カナダ・レスブリッジ市に住む作家玉代勢ダーシーさん(51)は母尚子さん(76)から琉舞を習い、沖縄を訪れるうちに、沖縄の精神を表現しようという思いに駆られ、2007年に小説「踊り」を出版した。「また沖縄をテーマにした小説を書きたい」と意欲を見せている。

 ダーシーさんはカナダに移住した県人が築き上げてきた沖縄コミュニティーがどのように沖縄の文化を学び、精神を受け継いできたのかに関心を抱いてきた。母の出身地・浜比嘉島(うるま市)を訪ね、家族・親類に話を聞き、糸満市の戦跡をめぐりながら沖縄の深い精神や文化に感じ入った。白梅の塔でおばの名前を見つけ、関心を深めた。
 ダーシーさんは「沖縄の踊りを学んでいる私にとって、沖縄の精神や文化は重要な要素だ」と語った。娘にも琉舞を教えており、踊りを通して「沖縄の心」を三世代で受け継いでいる。
 小説の物語は、県系3世の女性が1999年にカナダで交通事故に遭い、生死をさまよう。その夢枕に、ひいばあさんが語り部として登場。家族が歩んできた歴史を再現するというもので、沖縄戦の体験や踊りへの心を描いている。
 出来上がった小説を最初に読んだ時、涙を流したという尚子さん。「9歳の時、戦争を体験したが、壕から壕へ逃げ回った体験は本当に怖く、今でも忘れられない。小説のその場面は特に印象に残った」と話した。
 レスブリッジ沖縄文化協会の金城嘉孝会長は「ダーシーさんはウチナーンチュ意識や感受性が強い。彼女の本は移民で成り立っているカナダ社会で、県系人だけでなく、大変広く、多くの人々に読まれている」と話した。
英文へ→“Odori” – novel depicting the spirit of Okinawa

玉代勢ダーシーさんが書いた小説「踊り」