【島人の目】書評


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 最近読んだ英字新聞の記事に目を奪われた。ハワイであろう明るい太陽の下、輝くような笑みを浮かべる若き白人女性が、褐色の肌をした2、3歳になる男の子を慈悲深く抱いている写真で、私は心が洗われるような気がした。男の子も無邪気で、なんとも形容しがたいほどの雰囲気につつまれ、幸せそのものだというふうに見える。誰だろう、私の目は写真とともに記事に吸い込まれていった。

 5月3日のロサンゼルス・タイムズのカレンダー・セクションに「日陰の生涯」と題してブック・レビュー(書評)が掲載された。最近出版された本「風代わりな女性」への書評である。写真の女性は結婚前の名でスタンレー・アン・ダンハム、男の子の名はバラックと紹介されている。謎が解けた。幼児は2、3歳時のオバマ大統領で、彼をいつくしむ母との憩いのひと時の貴重な写真である。48年も前のコピーだ。
 スタンレーさんは1942年カンザス州生まれ、1995年にがんを患い亡くなった。息子のオバマ大統領誕生は2008年だから、晴れ姿に接することはなかった。ハイティーンのときにバラックさんが生まれている。書評によれば、本の内容にはスタンレーさんは「慣例に従わない異例の女性」と紹介され、身内や自分のことを親しい友人にさえ告げることはなかったという。「オバマ大統領の母」の知られざる一面にスポットが当てられているのだろう。
 書評(Book review)とは、一般的に、刊行された書物を読者に紹介する目的で論評や感想などを記す文芸評論の一形式である(ウィキペディア)。私も書評を最近琉球新報に書いた。沖縄県庁が4月中旬に出版した「沖縄県史 近代編」700ページに及ぶ大書についての書評である。私はその書評を6月5日、仲井真弘多知事一行訪米の際、ロサンゼルス空港で知事や平田大一文化観光スポーツ部長らにお渡しした。
 書評作成に際し、沖縄県指導主事・城間良昭さんに多大なアドバイスをいただいた。紙面をもって感謝の意を申し上げたい。
(当銘貞夫ロサンゼルス通信員)