【島人の目】栄光と挫折


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 元大リーガー投手の伊良部秀輝さん(42)が死去した。自殺といわれている。ロサンゼルス郊外の富裕層が住むパロスバーデスの自宅であった。ニューヨーク・ヤンキースなどで活躍、ニューヨーク・タイムズが惜別の記事を書いた。

 情報サイトのウィキペディアによると、伊良部さんは沖縄県宮古島市生まれの兵庫県尼崎市育ち。アメリカ人の父と日本人の母との間に生まれた。最近ではLAPD(ロサンゼルス警察)に飲酒運転の容疑で逮捕されたり、荒れた生活が見られたという。
 伊良部さんがカリフォルニア州ガーデナ市にフランチャイズ「スーパーウドン」を高校時代の友人と共同経営で開店したのは4年ほど前のことだった。同店はウエスターン・アベニューを隔てて北米沖縄県人会館の向かい左側にあるが、今では金網が巡らされ、新しい借り手もなく放置されたままだ。
 開店当時は客が列をなしていた。私もことあるたびに同店を訪れ、うどんを食べた。伊良部さんにインタビューしたくて何度も機会をうかがったが実現できなかった。おそらく経営を人任せにして本人は店に来ることはあまりなかったのではないだろうか。
 人間に「栄光と挫折」はつきものだ。1997年以来2009年の12年間に9回もPGA(全米ゴルフ選手権)マネーランキング1位を取得したタイガー・ウッズが10年は43位、今年は109位に落ち込んだ。大きな挫折である。だが彼は「私が期待するのは勝利である」と断言、試合復帰を果たした。
 伊良部さんほどの元大リーガーがなぜ42歳の短い生涯を自分で閉じなければならなかったのか。日本に帰って一からやり直し、人生の再起を図ってほしかった、と惜しむ声が聞こえる。
(当銘貞夫、米国ロサンゼルス通信員)