【島人の目】あの忌まわしい日の思い出


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 今年もまた9月11日がめぐってきた。世界中の人々がそれぞれに自分との結び付けで2001年の9・11の悲劇を思い起こすことだろう。その日私は全てのスケジュールをキャンセル、一日中テレビ中継でワールドトレイドセンターに飛行機が突っ込む悪夢のような信じられない光景に見入った。後でそれがテロリストの仕業だと知った時には体の震えが止まらなかった。

 一つの思い出が今よみがえってくる。日米修好150周年記念の一環として、沖縄文化交流協会(玉城正保会長)一行が1989年以来毎年のように沖縄の一流の芸能人からなる文化親善外交団を編成し、2003年までにアメリカ、イギリス、フランスはじめ世界21カ国53都市で組踊、沖縄舞踊、民謡を公演、民間外交を展開した。
 01年の同公演はニューヨークとロサンゼルスの予定であった。9月11日にニューヨーク入りを計画した一行は例のテロのためシアトルで足止めを食った。ニューヨークはおろかロサンゼルスへの飛行も禁じられ、公演が延期されそうになった。しかし、一行はシアトルからロサンゼルスへバス旅行を決行した。20時間もかかってやっとロサンゼルスに到着。9月15日の「琉球王国の黄金時代」と銘打った公演は古謝美佐子さんらの努力で、大成功であった記憶が思い出される。
 01年9月下旬といえば第3回「世界のウチナーンチュ大会」を目前にした時期で沖縄の人々は大会開催の行方を懸念したが、予定通り実行された。今年の東日本大震災も関係者に同様な感を植え付けたが、結局は実施されることに決まった。共に惨事を乗り越えていこうとの県民の決意に賛同を覚える。成功を祈る気持ちでいっぱいだ。
(当銘貞夫ロサンゼルス通信員)