脳梗塞を克服、大会参加 米東海岸県人会長、比嘉照行さん


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沖縄から再出発を誓う比嘉照行さん(左から2人目)と弟子たち=11日、那覇市内

 第5回世界のウチナーンチュ大会の前夜祭パレードまであと1日に迫った11日、来県した海外の県系人たちは積年の思いを込め、親戚や友人たちと再会や出会いを果たし、親睦を深めた。沖縄の人々は、彼らの思いをしっかり受け止め、熱く歓迎した。

 米国東海岸県人会会長で空手家の比嘉照行さん(67)が脳梗塞を克服し、弟子ら16人と来県。世界のウチナーンチュ大会期間中の14、15日に県立武道館で開かれる空手道・古武道交流会に出場する。比嘉さんは「体力、精神の限界に挑戦し自信をつけてニューヨークに帰りたい」と故郷から再出発を誓っている。
 名護市出身の比嘉さんは1972年、空手道場を開くため渡米。さまざまな困難があったが、ニューヨークで本場沖縄の空手を広めたい一心で乗り越え、大学で教えるまでに。道場も大きくなり、現在は80人の弟子がいる。
 そんな比嘉さんを病魔が襲ったのは昨年10月1日。朝、ベッドから起き上がろうとすると、左足が上がらず、唾も飲み込めない。やっとの思いで立ち上がったが、そこで意識を失った。気が付くと救急車の中にいた。
 一命は取り留めたものの、左半身は不自由になり、言葉もしどろもどろになった。空手人生は終わりだ、と思った。道場を閉めることも考えた。しかし、ニューヨークで沖縄出身の空手の師範は比嘉さん一人しかいない。「私がいなくなれば、ニューヨークの沖縄空手の灯を消してしまう」と、勝ち気で頑張り屋の「名護マサー」の意地で奮起した。
 道場にある道具を使い、リハビリに励んだ。最初は軽いダンベルも上げられなかったが、徐々に回復し、今年5月には以前と変わらないように。「体も自信がでてきたし、弟子たちに沖縄を見てほしい」とウチナーンチュ大会参加を決めた。
 14日は有段者の弟子を相手に初級、中級、上級の空手護身術を90回連続して行う演武を披露する。「初の挑戦。その成功で自信を取り戻すことができる」。39年前に飛び立った沖縄からもう一度、飛び立つ。(玉城江梨子)