【アルゼンチン】障がい者ケア NPO創立者 平良さんが講演会


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障がい者に対する家族の愛と協力の必要性を強調する平良ネリダさん(左)

 障がい者とその家族のための治療と社会復帰のための活動に協力するNPO・EDDIM協会創立者の平良ネリダさん(56)の講演会がこのほど、沖連会館で開かれた。150人の聴衆が集まった会場では、協会の事業内容と障がい者を収容する環境を設ける活動の動機となった創立者の感動的な人生体験が紹介された。

また聴衆の中にはいろいろな事情で定期的に会うことのできなかった多くの家族との再会が果たされ、平良さんにとっても大変有意義なひとときとなった。

 講演終了後、日系ソリダリアと大宜味村人会から多様性と特殊教育分野での貴重なサービスと、事業へのたゆまない熱意をたたえて平良さんにプラカードが贈呈された。
 平良さんは夫・ダニエルさんと結婚後、チュブー州プエルト・マドリニンに移住した1986年に妊娠。6カ月目の翌年に脳麻痺(まひ)、てんかん、挙動異常などの後遺症のある娘のタミちゃんが生まれた。その当時の診断は絶望的で、医師からは「植物状態になる。諦めなさい」と言われた。体重の少ない未熟児で生き延びる可能性は極めて少ないと宣告されたにもかかわらず、両親は落胆しなかった。悲しみ、失望感、自制力欠如の中で、親が発揮する偉大な精神力と治療への理解力を発見した。
 タミちゃんは目が見えず、耳が聞こえず、まるでプリンのように自分の力で動くことができなかったが、そこには一日ごとに励まし合いながら動的回復に努力した両親の存在と、自分で動けるようになるまでの各種の治療があった。
 そして、平良さんとダニエルさんはタミちゃんが社会復帰のための発育に必要な環境を求めたが現地ではそうした場所がなかった。両親は94年2月にそのような環境を設けることを決意、第49学校で同じ問題を抱える子どもの親たちとの最初の集まりを催した。
 夫ダニエルさんの死去を乗り越え、EDDIM協会の最初の会合には知的障がい、動的障がいあるいは両障がいに悩まされている子どもの収容空間の欠如など、同じ問題を抱える90人が参集した。創設から18年後、この協会では障がい児のみならず障がいのある成人たちも受け入れている。
 平良さんは知的、身体的、精神的障がい者対策に絶対欠かせてならない大切なものは、障がい者に対する家族の愛と協力であると主張している。障がい者対策には人間自体を目的とすることが大切なので、そのためEDDIM協会を通じて障がい者のいる家庭を対象に、障がい者の治療や対処方法などについて協力している。一方で特に精神障がいのケースにおいて偏見、恥、障がい者を人間として劣るものとする考え方を払拭(ふっしょく)することが重要であるという。
 このため、協会は障がい問題の解決には、社会自体を教育することに重点を置いている。協会には「親のための学校」がある。この学校では各方面の専門家が家族をサポートし、セラピーについてアドバイスを行っている。
 このような形で行動することにより、家族を通じて、障がい者へのリハビリだけではなく、社会参加を目標としている。専門家自体は多いが平良さんのような人は貴重である。平良さんは毎日愛を与えることを心底から行うことができる専門家を集めるため、活動している。(大城リカルド通信員)