【アメリカ】寄贈した芸術書の行方… 山城さんの心残り代行して確認


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クワロン下地のり子さん(中央)と図書係の富山直子さん(左)、友人の池原登志子さん=うるま市中央図書館

 カリフォルニア州リバーサイド在住の看護師・クワロン下地のり子さんが、ロサンゼルス在住の長寿者の一人で日本語新聞「羅府新報」に今も現役でコラムを書いている山城正雄さん(95)の願いをかなえた。

第5回世界のウチナーンチュ大会に参加したかったが、足腰が弱って旅を断念した山城さん。故郷うるま市の図書館を訪ね、寄贈した本が活用されているかどうかも確認したかったがそれもできそうにない。かなわぬ夢となりかけていたが、大会に参加する下地さんが出発前日に山城さん宅を訪ねた。いきさつを聞いた下地さんは「私が行ってあげる」と夢の代行を買って出た。

 下地さんが山城さん宅を訪ねたのは「何か彼のために沖縄でできることがあれば」という思いからだった。山城さんは大会について「もう足腰が弱って旅は無理だなあ。でもうるま市の図書館は訪ねてみたいなあ」と目を細めて話していた。
 山城さんは帰米2世。移民文学者と称されこれまでに2冊の本を出版、まだ現役で羅府新報の「仔豚買いに」という題でコラムを書き続けるウチナーンチュである。
 うるま市は山城さんの故郷で、本を寄贈したりして関わっている。その一部である「贈呈したアートの本は活用されているのかどうか」が山城さんの思いであった。
 うるま市の中央図書館は旧具志川市役所のあった場所。旧具志川市は下地さんがコザ看護学生時代に住んだ町で懐かしかった。しかしその時の面影はほとんどなく図書館の入り口あたりにそびえる「翔」という文字が刻み込まれている石碑の近代的な作りが印象的だった。具志川市役所跡の石碑の前を通り、うるま市中央図書館の中に入った。
 10月16日は日曜の朝で地域の子ども連れの若い母親たちやお年寄りが入ってきた。でも図書館は静かであった。受付の富山直子さんは親切に下地さんの依頼を書き取り調べるまで待つよう中に案内した。
 しばらくして富山さんが日のあたる明るいアート・セクションに案内した。山城さん夫妻の寄付したアートの本「世界の巨匠シリーズ」計39冊が一部の本棚を占めていた。下地さんは「山城さんの『ちむぐくる』はここ、うるま市にもあるんだな」と心温まる思いがした。そして「この方は私たちの大の大の先輩でウチナーンチュの誇りですよ」と、ヘルプしてもらった富山さんに山城正雄著「帰米2世」と「遠い対岸」を紹介し一緒に記念撮影した。下地さんは「こういう立派な移民の先駆者たちがいるから今の私たちがあるんだなと、さらに大きい希望を与えられた訪問であった」と語っていた。
(当銘貞夫通信員)