【特別寄稿】後輩に贈るメッセージ/夢向け今日を大切に 社会貢献できる人へ


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 全国に名の知れたピアニストの高良仁美さん(46)に母校の上本部中の講演会で一緒する機会に恵まれた。といっても同じ日に時間をずらして私の講演と高良さんのピアノ公演が行われたわけではない。上本部中学校の仲村清光校長の「上本部中 校長だより」の中に、同校出身のピアニスト高良仁美さんのコンサート(10月24日)の模様の記事と、私の講演(同19日)の琉球新報掲載のコラム「ウチナーンチュ大会を終えて」が同時に印刷、全校生徒に配付されたということである。

 高良仁美さんは本部町備瀬出身、上本部中を母校とし、私の後輩である。武蔵野音大を卒業、現在プロのピアニストとして活躍している。東京を中心に日本全国からの依頼に忙しく活動している仁美さんを上本部中に招へいし、課外授業の一環として音楽鑑賞会が開かれた。仁美さんの父・高良明信さんは母校の上本部中で長いこと校長をした私の恩師である。高齢にもかかわらず自身で運転して私の講演に出席、55年ぶりの再会に歓喜した。
 上中でのもう一つの思い出は81人の全校生徒から寄せられた、私の講演に対する「感想・お礼」のメッセージがつづられた一冊のノートであった。私は全文に目を通した。「今日は、わざわざアメリカから上中に来てくださってありがとうございました。本当に当銘貞夫さんのお話にはユーモアに満ちて、いっぱい笑いました!。あと、今まで講演した中で、1番おもしろくて、よく質問をさせてくれていて、本当にすごいなあと思いました。また、今度会えると良いです」(3年、喜納明代)。「アメリカでの生活の話など聞けてよかったです。自分たちの先輩がアメリカにいるなんて思いませんでした。私には夢があります。それは『北山の嵐』という劇で、海外公演をすることです。その時は見に来てください。また、いつか会いましょう」(3年、金城七々海)。「今日は僕たちにいろいろなことを教えてくださり、ありがとうございます。質問に丁寧にわかりやすく答えてくれてありがとうございました。今日のことは忘れません。アメリカに戻っても沖縄のことを忘れずにがんばってください」(2年、謝花海斗)。「私は貞夫さんの出身と同じ新里に住んでいます。私の生まれ育った新里にこんなすばらしい人がいたんだな、と思いました。貞夫さんの話を聞いてやっと『将来の夢』ができました」(3年、上間花梨)など、大半の生徒の感想文には「すごい、面白かった」との表現があった。
 西原中の生徒の感想も同様の表現が多かった。身寄りのない一人の若者がアメリカ大陸に移民し42年。もろもろの困難を克服し夢の実現に努力した。アメリカ人的ユーモアに満ちた表現も会得した。生まれ故郷の沖縄に何かを残したい―。そんな一生懸命な態度が彼らの脳裏に焼きついたにちがいない。
 愛する沖縄の後輩たちに「I have a dream 明日を夢見て今日を大切に、地域社会に貢献できる人間を目指せ」とのメッセージを贈る。
(当銘貞夫ロサンゼルス通信員)