【ロサンゼルス】高峰氏らの功績紹介 ノンフィクション作家、飯沼さんが講演


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 日本エッセイスト・クラブの会員で、米国在住2人のうちの一人、飯沼信子さんの講演がこのほど、米ロサンゼルス市のリトル東京市民協会で開かれた文章教室で行われた。自身の作品にもある医学博士の高峰譲吉氏について紹介した=写真。

 日本エッセイスト・クラブ(東京都港区新橋)は今年創立60周年を迎えた。1951(昭和26)年当時のジャーナリズムの第一線で活躍する評論家、エッセイストらが参加して創設された。現在活躍されている方で養老孟司、森本哲郎、岩見隆夫、堤未果、女優の渡辺美佐子、吉行和子の各氏ら有名人をはじめ、大学教授や新聞の論説委員・元編集長など344人が名を連ねる。飯沼さんは日本ペンクラブ会員でもあり、ノンフィクション作家として知られ、米国での第一人者だ。
 このほど60周年記念誌が発行され、29編が掲載されている。今回の記念誌には沖縄在住の長田亮一さん「追憶の日日」と、アメリカ在住の筆者「意欲に満ちた沖縄からのインターン生」も掲載された。筆者のコラムを読んだ飯沼さんは「こびるところがなく、調査の行き届いた良い作品だが、欲を言えば情緒がほしい」と評していた。
 最近メディアからの情報によると、日本の主に私立大学で、「クリエーティブ・ライティング」という聞き慣れない名を冠した学科を設ける大学が増えているという。作家や編集者らが教員となり、文芸作品の創作や編集のスキルを実践的に身に付ける「学問」。飯沼さんは、日本の大学からの要請で時折、クリエーティブ・ライティングの指導に当たっている。
 飯沼さんの作品は「野口英世とメリー・ダージス」「黄金のくさび―海を渡ったラストプリンス松平忠厚《上田藩主の弟》とカリー・サンプソン」「鈴木大拙とベアトリス・レイン」「長井長義とテレーゼ・シューマッハ」など、明治・大正期に日本を背負った偉人たちと、異国の妻のロマンスを題材にしたものがある。特に「高峰譲吉とその妻キャロライン・ヒッチ」は最近、「さくら さくら」と題して映画が製作された。市川徹監督、加藤雅也の主演で好評を博した。
 高峰譲吉博士はタカジアスターゼの発明ばかりでなく、ポトマック・リバー沿いに6千本の「桜の木」を寄贈した。孫の高峰三世(ロサンゼルス在住)はアドレナリン製薬として世界の薬学、医学に貢献した。
 講演で飯沼さんは「明治は遠くにありて思うものといわれる昨今だが、明治のサムライとしてアメリカに乗り込んだ高峰譲吉博士や野口英世博士、ドイツでエフェドリンを発見した長井長義博士らは、日本薬学・医学の黎明(れいめい)の扉を開いた戦士であり、賛辞を惜しまない」と話し、新作品への取り組みを始めたことを強調した。
(当銘貞夫通信員)