本紙海外通信員 2012年の抱負


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 世界各国で活躍するウチナーンチュの話題を届ける琉球新報海外通信員から、新年のメッセージが届きました。昨年は第5回世界のウチナーンチュ大会が盛大に催され、ウチナーンチュネットワークの強い絆を確かめ合った記念すべき年でした。今年はそれをさらに発展させる契機となる年です。各通信員の今年の抱負を紹介します。

【中国】小谷良太/国超えた思いやりで
 新年明けましておめでとうございます。さて、昨年は、悲しい出来事が多かった年だったと思われます。特に昨年の3月11日に起きた東日本大震災は、ここ上海でも連日、トップニュースとして報道され、多くの中国人もこの甚大な自然災害に心を痛めていました。そんな悲しい出来事の中、中国からも多くの支援があり、国境を超えた、助け合う心、互いにいたわりあう心が垣間見え、そんな人々の優しさが、いろいろな可能性を感じさせてくれた年でもありました。
 私は、今年、上海で独立して2年目となる、まさに今からが正念場となる年です。本職は建築、内装、広告のデザインですが、今年は、沖縄と中国を結ぶような活動にも力を入れていこうと考えています。
 中国は大きな国だけに、多くの諸問題を抱えていますが、沖縄にとっては、さまざまな面でとても重要な地域であり、中国とどのように付き合っていくかは、今後ますます重要になると思われます。そんな中、沖縄と中国の懸け橋となれるよう、前述した、国境を超える優しさ、思いやりをもって臨むことを今年の抱負に掲げ、まい進していきたいと思います。

【イギリス】森田恵美子/沖縄旋風へ県系一丸
 懐かしい故郷の皆さま、新年おめでとうございます。
 今年、英国ではロンドン五輪が開催されます。また沖縄関連では、4月に在ロンドン県出身作家と沖縄県で活動する県出身作家を招いて11組合同の展示会「LOOCHOO」が開催されます。その他にも県関連のさまざまな催しが企画されており、今年のロンドンは沖縄旋風を巻き起こすべく、県人会はじめ県関係者の方々一丸となって奮闘中です。
 私事では琉球新報海外通信員、そして昨年任命いただいたうちなー民間大使として、今後もわが沖縄県と英国の懸け橋になるべく奮起する所存でございます。
 18世紀後半に英国海軍が沖縄近海で座礁し、琉球人から援助を受け厚くもてなされたという記録がございます。その際に英国人は琉球から、そのオリジナルの文化やホスピタリティーに非常に感銘を受けたようです。
 その先人たちの遺伝子を受け継ぎ、現代の琉球を英国やヨーロピアンに紹介すべく、まずは「LOOCHOO展」で英国を、うちなー文化でバンみかし! 今後の沖縄―英国間が皆さまにとっても英国人にとっても「近い国、親しみある国」に発展するよう精進してまいります。

【ロサンゼルス】当銘貞夫/「ささやかな懸け橋」に
 「われ日本海の橋とならん」という新書を読み終えた。著者の加藤嘉一氏は静岡生まれの27歳。高校卒業後単身中国へ渡り、北京大学修士課程を修了した。年間300以上の取材を受け、200本以上のコラムを書き、毎年2~3冊の本を出版。中国で「もっとも有名な日本人」となった著者が「日本は、そして日本人は、これからいったいどこへ向かえばいいのか」と問う。
 2011年は激動の年であった。暮れになって北朝鮮の金正日総書記が死去、若い正恩氏が権力継承と報道されている。今後のアジア情勢は、そして沖縄の基地問題はどのように変化していくのであろうか。「われ東シナ海の橋とならん」のタイトルで沖縄と中国との友好関係を模索した本を加藤氏に期待したいが、いかがなものか。すでに彼は「尖閣諸島沖での問題」で中国と日本の政策に触れている。
 加藤氏みたいな大きなことはできないが、今年もアメリカに住むコラムニストの端くれとしてグラスルート・デモクラシー(草の根民主主義)の観点から、アメリカと沖縄の友好に役立つコラムや記事をたくさん書く予定だ。自分のペース、カラーで沖縄と米国を結ぶ「ささやかな懸け橋」となれるよう努力したいと思いますのでご声援ください。

【ドイツ】外間久美子/体調戻り喜びに満ち
 新年あけましておめでとうございます。昨年の新年あいさつに、奇跡が起きて世界のウチナーンチュ大会に参加できますようにと書きましたが、残念ながら奇跡は起こらず、それどころか大会と時を同じくして、音楽学校の講師陣コンサートが決まり、残念ながら参加できませんでした。しかし、参加した郷友の感動的な経験をお聞きし、大会成功をうれしく思いました。
 2年前から組んでいるピアノトリオの練習・コンサートに追われ、なかなか通信員のお役目を果たせず申し訳ない限りです。そのトリオ仲間を連れて、この夏、7月中旬に沖縄のパレット市民劇場でのコンサートを計画しています。体の調子を崩し、演奏活動に終止符を打ったつもりでいたのですが、健康を取り戻し故郷でまた演奏ができる喜びに満ちた新年です。2012年の皆さまのご健康とお幸せをお祈りいたします。

【アルゼンチン】大城リカルド/記事執筆に精進
 昨年、前任者から引き継いで初めて通信員になった年が終わり、今年も責任をもって続けたいと思います。私は日系2世で幼少期に英語の授業は受けていましたが、日本語の授業は家庭教師も含めて受けたことはなかったので、今通信員として仕事をしていることをうれしく思っています。
 1975年に雑誌『暮らしの手帳』の「ある日本人の暮らし」の中に、父親を亡くして父の代わりになった少年大工の話を読んで、とても感動しました。でも、その当時は日本語が少ししか読めなかったので、勉強して少しずつ読めるようになりました。そして、昨年、まだ未熟ですがアルゼンチン日系社会の記事を書くまでになりました。
 記事を書くことを、日本語を勉強したように、少しずつ精進して、沖縄と日系アルゼンチン社会の懸け橋になれたらいいと思います。

【イタリア】仲宗根雅則/対話「元年」を願う
 新年のあいさつとは少し趣旨が違うかもしれませんが、僕は今年は沖縄が「地元以外の日本」へ向けて、情報や意見や説明や主張などをしっかりと発信していく「元年」になることを願っています。
 テレビというメディアの末席を汚す者として、僕は連日CNN、アル・ジャジーラ、BBCインターナショナル等々の24時間衛星放送やNHKなどの報道番組をリアルタイムで追い掛け、同時に新聞や雑誌などにも絶えず目を配ってきました。最近そこにインターネットという途方もなく強力な媒体が現れたおかげで、情報収集がより広範、詳細、迅速、かつ簡単になりました。
 僕は今では遠いイタリアにいながら、日本の様子が細大漏らさず、それこそ手に取るように分かると感じています。そんな中で強く思うことの一つが、沖縄地元の意見や情報や考えってほとんど中央には届いていないな、ということです。
 これは、まぁ、日本全国の地方の全てに当てはまることだとは思いますが、沖縄の場合は基地問題や特異な歴史的いきさつや他府県とは違う文化背景があったりしますから、どこよりも強くそして地道に自らの立場を全国に向けて発信し続ける努力をするべきだと思うのです。ただし、押し付けず、被害者意識に凝り固まらず、冷静に。
 世界にも日本にも実に多様な意見や、考えや、主張が満ち満ちています。それはとても活気にあふれた素晴らしいものです。多くの異論や見解や批評などに目を配りながら、沖縄がぜひ「地元以外の日本」へ向けて情報発信と対話を開始することを祈ります。対話こそ理解と親和と発展の源泉ですから。

【アメリカ】鈴木多美子/米国の“今”を紹介
 ひょんな事から大胆にも通信員を引き受け、つたない文を送る事になってはや20年近く。最初の担当記者からは、アメリカの珍しい植物などをとアドバイスされたが、植物には疎かったため早速植物図鑑を購入し、沖縄にはないだろうと思う植物を紹介した。次の担当記者には「国際結婚」を依頼され、取材を申し入れ県系人の話を聞く事に。その時から人に会う楽しさを覚え、また第一線で活躍する専門職の方々の話にがぜん興味をもち、取材が喜びになった。これまでの担当記者と取材に応じてくれた方々にあらためて感謝したい。
 さて、初参加した第5回世界のウチナーンチュ大会。何度も参加しているウチナーンチュでない夫は、初回「ウチナーンチュに生まれてきたかった」との感想を述べた。ウチナーンチュ大会がどれ程のものか初めて参加して知らされた。数々のイベントを楽しみ、何よりも増して地元の方々の歓迎のおもてなしがうれしく、ウチナーンチュとしての誇りとアイデンティティーを自覚させられ、多くの人たちは感謝と感激の思いでいっぱいだったと思う。
 だが、平和であるべき心のよりどころの沖縄は、中央とアメリカの揺さぶりで新基地建設がネックになり決して穏やかとは言えず、異国にいて憂う事の一つである。良き隣人であってほしい米軍との共存を余儀なくされている沖縄であるが、県民は意外にアメリカ人を知らないのではと感じる。さらに米国を追随している日本の現実。ならば、一中年女性の目に映るアメリカの昨今の情報を提供する事もありではないかと。今年は、バージニア州からアメリカの興味ある話題や社会事情が紹介できたらと考えている。