【キラリ大地で】アメリカ 全米一になった日本語教師 安座間喜治さん


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全米外国語教師最優秀賞受賞を喜ぶ安座間さんと母ケイ子さん=コロラド州デンバー市

 アメリカンドリームを実現させ、全米最優秀外国語教師に選ばれた安座間喜治さん(42)(12月4日付30面)の少年時代、学生時代、教師になってからはどんな考えを持っていたか、受賞の背景とともに紹介したい。

 小さいころの安座間さんは物忘れの多い、よく授業中に窓の外を見て空想にふけっている子供だったようだ。親に高い学費を出してもらって遊びほうけていた大学時代。ミュージシャンの道に興味を失い、卒業後は人生の目的を探すという言い訳をつけて渡米したのが24歳の時だった。そこでいろいろな人たちと出会い、自分探しの旅が始まった。
 アメリカに来て3カ月ほどの滞在を考えていたが、まさかこんなに長く住むとは思っていなかった。駆け出し教師のころは大変だった。最初小学校でアシスタントとして雇われることになり、全くお金がなくてボロボロのスーツケース一つで小学校の初日に校長室を訪ねた。3カ月くらい校長先生の弟さん宅のソファで寝たことや、学校の給食でくいつないでいたことなどが思い出深い。
 教師は偶然始めることになった。今の高校では今年で12年目になる。レベル1のクラスから日本語だけでの授業を実施。そのために、会話の背景をはっきりさせることが大切なので、絵やビデオクリップ、生教材を取り入れ、会話に集中した授業を行っている。クラスではペアワークやゲームなどを取り入れて、学生の興味をひくことを心掛け、言葉だけではなく文化も取り入れて教えた。
 一昨年の3月にカリフォルニア州で優秀教師の5人のうち1人として選ばれた後、州を代表してアメリカ南西地区大会に行くことが決まった。その過程ではポートフォリオ(書類)提出を余儀なくされ、授業計画、教育概念、現代の外国語教育問題に対しての考え、学生と同僚からの推薦状、学生のサンプルなどを含んだものを送らなければならなかった。会場では審査員との質疑応答やスピーチなどの後5州からの代表に選ばれた。
 全国大会ではポートフォリオのほかに1時間の授業風景を撮った無修正のビデオも必要とされた。5人の審査員とのインタビューは一番最初で朝9時に行われた。審査員はアメリカでも最先端の外国語教育者で構成されていて、行く前は緊張したがとても和やかな雰囲気で進み、自分が出せたので良かった。
 「州と全米規模の受賞という約2年間のこの過程を通して学んだことは、効果的な教え方はもとより外国語、外国文化教育の大切さの再確認だった。本当の意味での相互理解を達成するには、言語と文化習得以外にないと思う」と印象を語った。
 (当銘貞夫通信員)