【キラリ大地で】ロサンゼルス 自閉症の息子の療育励む 濱川真寿美さん


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
琉大特別支援教育リサーチの先生方と濱川真寿美さん(前列左から3人目)と寿人君(同2人目)ら=リトル東京ミヤコ・ホテル

 ロサンゼルスを拠点とする日系サポートグループ「手をつなぐ親の会」に参加し、身障者に関する情報を得ながら自閉症のある息子寿人(シュート)君(11)の療育に日々取り組んでいるのが濱川真寿美さん(33)=旧姓吉浜、首里出身=だ。真寿美さんは東京造形大学在学中に夫・濱川豪太郎さんと結婚し長男・寿人君が産まれた。大学卒業後、アメリカ留学中であった夫の元へ、8カ月だった長男の寿人君と渡米した。当時から寿人君は少し様子が他の子と変わっていた。音には反応するが、名前を呼んでも反応せず、体がふにゃっとしていたという。

 アメリカでの1歳児健診で医師と相談し、専門家に診てもらおうと診察の予約を入れたところ、なんと半年待ち。その間に年末年始を迎え沖縄への里帰りをすることになり沖縄で診察してもらうことになった。その結果、まだ1歳ということで、当面は様子を見るということになった。真寿美さんは、しばらく沖縄にいることを決意した。
 沖縄にいる間は夫の実家に同居し、浦添にある「たんぽぽ園」という発達の遅れや障がいのある就学前の子供たち対象のプログラムの母子教室へ親子で毎日通園。美術工芸の特技を生かし、午後は沖縄市で祖父母の営む城間太鼓三味線店での製作作業を手伝った。その傍ら、アメリカではどういう療育が受けられるのかひたすらリサーチ。息子には父親との関わりも重要と考えて、約半年後にアメリカでの療育に関して決定的な情報を得て再び渡米した。
 渡米後は地域センターでの診察の結果で2歳前に自閉症と診断され、専門家から乳児早期介入サービスを受けるよう勧められる。同時に「手をつなぐ親の会」にも参加し、毎月行われる勉強会で療育に関する情報や障がい者の権利、法律を日本語で入手した。2歳の時に専門家から必要と言われた学校での集団生活、言語療法、作業療法、音楽療法、行動療法などの療法に取り組む。現在、地元の小学校の6年生で一対一の専門家サポートを付けて特別支援学級に在籍し、学校では授業の合間に特別訓練を受け、家に帰ってからは水泳、大学での体育のプログラムなどに参加している。
 アメリカでは障がい者に対する差別禁止に係る法制度「個別障がい児教育法」があり、障がいのある全ての子供に公教育を受ける権利を認めるもので、基本的に健常児と共に学ぶ統合教育を義務づけている。障がいのある子供も年齢相応の発達に追い付けるよう学習、療育できる権利がある。年に1度、項目別にアドバイスを受け、子供個人のための1年間の計画・目標が立てられる。
 その半面、アメリカは医療費が高額で、健康保険料を払って保持していても現実的には保険を使えない医師や専門家にかからなければいけないことも多く、日本人の障がい児には厳しい現実もある。「手をつなぐ親の会を通して琉球大学の先生方にお会いすることができた。先生方の特別支援教育プログラムリサーチがたくさんの方に支援され、助けを必要とする方々が今より一層生活しやすくなるような、沖縄の未来に期待します」と真寿美さんは将来に明るい希望を託す。(当銘貞夫通信員)