【島人の目】「We are the 99%」


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 昨年10月、沖縄からの友人らとニューヨーク入りしたその日、ニューヨークは観測史上最も早い時期の雪に見舞われた。
 日本人ガイド付きの観光バスに乗り、マンハッタンの南に位置するウォール街へ進む途中で反格差デモの行われているズコッティ公園の野営を車窓から間近に見た。氷点下の空の下、占拠された公園は、所狭しとテントが張られ、プラカードを手にした若者たちは、口々に何かを叫んでいた。ガイドさんいわく「とても平和的な抗議活動で、ニューヨーク警察も見て見ぬふり状態。ただ、周辺はとても臭いです」と。周辺には公衆トイレも無く、特に女性たちは、この寒空の下どうしているのだろうかと気になった。その時のズコッティ公園は、実力主義のアメリカンドリームは、もはや幻想であり米国社会への不安、不満が充満している空間に感じた。そして、とうとう撤去を余儀なくされた自称99%の人たち。健康保険にも加入していないはずで病気にでもなったら大変だと少し安堵の気持ちも。

 米国勢調査局の調べによると2008年4・9%だった失業率が翌年には、9・1%になり25歳未満の失業率は、なんと17%。先日、昼食に入ったレストランで息子の友人が働いていた。名門工科大学を卒業したにもかかわらず、専門職に就けずにバイトの身の上。大学を卒業しても就職できずにいる若者たちを直撃している。
 若者らの主張は、金融機関が公的資金によって救済されたが、トップは、いまだ巨額の報酬を受け取っていることに疑問を投げ掛け「1%の富裕層に富の40%が集中している。富裕層への増税を」と訴える。雇用対策もままならず、「金持ちはますます金持ちに、貧乏人は、ますます貧乏人に」の米国の格差社会は深刻だ。
 さて、沖縄はと言うと、全国一失業率が高いとか。余談だが、ニューヨークの市内観光バスに偶然にも沖縄のビジネス界の企業家たちと乗り合わせた。景気低迷の米国で何の視察目的なのか疑問であったが、沖縄の若者たちのためにも、地元のトップ企業として大いに躍進してほしいと、心の中で彼らにエールを送った。
(鈴木多美子、米国バージニア通信員)