【島人の目】沖縄食と地中海食


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 健康とダイエットに良く、従って長寿にも好ましいと言われるのが、イタリア料理を含むいわゆる地中海食である。
 地域の特産品であるオリーブ油や野菜(特にトマト)、パスタなどの穀物、魚、果物、豆類をたくさん食べ、欧米食に多いバターやラードなどの脂肪類と乳製品は少なめに取る。また卵、鶏肉、ワインなどはほどほどにして、赤みの肉はほとんど食べないという、まるで健康食のカタマリのような献立である。

 地中海域で大量に消費される「新鮮な」オリーブ油は、精製油と違ってオリーブの実の皮も種も全て使った100%生ジュースのようなものだから体に良い。また主食同然のパスタは、ご飯などに比べて血糖値をゆっくりと上げる性質があるから体脂肪がたまりにくく、よく食べられるトマトにも老化を防ぐ効用があるといわれる。
 一方バターやラードなどはぜいたく品なのであまり食べない。赤みの肉はもっとぜいたく品だから特に貧しかった昔は食べる機会がなかった。
 要するに、アメリカ風の脂っこいこってりした食材がまん延する以前の、沖縄料理と似た特徴を持っているのが地中海食である。そして残念ながら、地中海食もまた沖縄料理と同じ運命をたどりつつある。
 かつて、貧しさゆえに多くの脂肪類や赤みの肉などを食べられなかった分、人々は反動でそれらの食べ物に飛び付く。貧困時代を覚えている沖縄、ひいては日本全体が、肉食に始まる欧米風の不健康な食べ物に魅せられていった状況とそっくり同じ環境にあるのが、今の地中海食なのである。
(仲宗根雅則、TVディレクター)