【島人の目】桜とハナミズキ


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 「君と好きな人が百年続きますように」との平和のメッセージを託した一青窈さんのハナミズキの歌。911同時テロで亡くなった人たちに思いを馳せ、一青窈さんは「テロの連鎖を断ち切り平和な世の中が続くためには自分の好きな人の幸せを願い次にはその人の大切な人、またその人の大切な人と連鎖していくとやさしい世の中になる」との思いを込めたという。

 実はこのハナミズキ、北米が原産の紅葉樹である。そして日米友好の証しとしての役目を担った樹でもある。1912年に東京市から米国に贈られた桜の苗木3020本のお礼として3年後にハナミズキの苗40本がアメリカから日本に贈られた。花言葉は「返礼」。そして「私の思いを受け取ってください」。
 桜とハナミズキはそれぞれ日米の親善の樹として平和の象徴であったが、日米開戦時に日本では敵国の樹とみなされ、日比谷公園などに植えられていたハナミズキは根こそぎ持って行かれ行方不明になった。
 一方ワシントンDCの桜は、トーマス・ジェファーソン記念堂が建設される際7千本の桜が切られることになるのだが、市民からの抗議が起こる。それでも何本かの桜樹が引き抜かれた。抗議の炎は婦人団体によって燃え上がり女性たちは桜樹に体を鎖でつないで抵抗した。とうとう大統領は根負けし桜樹は難を逃れたという。
 また真珠湾攻撃の勃発で怒りの矛先が桜に向かい桜樹はなぎ倒される事態になった。そして、終戦の46年まで「オリエンタル・チェリー・ツリー」という名前に変えられた。
 幾多の試練を乗り越えてきたポトマックかいわいの桜は現在3750本。満開時の桜は圧巻である。世界中から観光客が集まるワシントンDCの桜祭りは今年植樹100周年を記念して5週間にわたって開催される。沖縄からはエイサー、琉球舞踊、琉球音楽三線演奏などが各イベント会場で披露される予定。
 さて、ハナミズキの原木は東京大学の小石川植物園に健在だという。この老木は幹周り1メートル、高さ8メートルもある堂々たる樹に成長し花を咲かせるという。
 ちなみにハナミズキは、バージニア州の州樹で英名は「Dogwood」。樹皮の煮汁で犬の皮膚病治療に使用されたのが名前の由来だという説がある。
 例年になく暖かいバージニアかいわい、桜はピークを過ぎ今ハナミズキが満開となった。
(鈴木多美子、米国バージニア通信員)