【島人の目】中国・台湾系の活躍


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 最近アメリカ中のメディアを、センセーショナルに賑(にぎ)わしているプロバスケットボールNBAの選手がいる。彼の名はジェレミー・リン(林)で、ニューヨークニックスのポイント・ガードだ。リン選手はカリフォルニア州出身で両親が台湾人。だが、米メディアは「米国生まれの中国、台湾系NBA選手は初めて」と、中国と合わせてひとまとめに表現することも多い。23歳で、並外れた力を持つリン選手を、LAタイムズは連日にわたり社会面、スポーツ面、あるいは1面トップで彼の活躍を紹介している。

 なぜ彼がアメリカのメディアでそれほど取り上げられるようになったか。彼の所属するニューヨークニックスは彼がベンチプレイヤーの時までは東部地区最下位に低迷していた。2月6日に彼が先発するようになってから、7連勝して、一気に地区2位に上昇、プレーオフ上位8位に入るのは間違いないようだ。
 アメリカ生まれのアジア系プロバスケットボール選手はこれまで傑出した選手は皆無だ。ヤオ・ミンがいたが、彼は中国大陸出身だった。アメリカにおけるアジア系はいろんな意味で差別的表現がされていることは否めない。小柄、機敏さに欠ける、ルックスが劣りメディア・アピールが十分ではない―などといった面が強調される。だが、リン選手は例外だ。191センチと、ガードとしては小さい方ではない。
 ハーバード大学卒業という異例の経歴も持つ。同大卒のプロスポーツ界での活躍選手はまれで、クリスチャンであるということも彼のイメージアップにつながっているようだ。今話題の中国とも関連している。
 中国系アメリカ人は現在約227万人で、アジア系最大だ。彼らのアメリカにおける経済面での活躍はすさまじい勢いだ。南カリフォルニア一帯の高級住宅はほとんど中国系が居住、スーパーマーケットや不動産業など事業の成功者が多数を占める。2月13日には中国の次期トップ習近平国家副主席が訪米、同14日にはオバマ大統領と会談、その歓迎ぶりには目を見張るものがあり、日本のリーダーが訪米した際の歓迎との差を、まざまざと見せ付けられた。米社会が中国の動きに敏感になっているのも、リン選手の活躍と併せ注目度を一層高めていることは否めない。
(当銘貞夫、米ロサンゼルス通信員)