【島人の目】忘却


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 ロサンゼルス地域のローカル日本語新聞にコラムが掲載された。コラムの作者はイングリッド・バーグマンが書いた英語のフレーズを和訳、「幸せとは良好な健康状態と不良な記憶力から生まれる」との名言に触れていた。

バーグマンと言えば、往年のハリウッド名女優で映画「カサブランカ」「追想」などに出演、2度のアカデミー主演女優賞、生涯にわたって3度のオスカー賞を獲得した。名女優と言えども多くの忘れ去らねばならないバッド・メモリー(不良な記憶力)があったとして「ほどほどの忘却」の方が良いのではないかと結論付けている。
 それと相反して、私には忘れてはならないことを忘れてしまっていたことがあったのを思い出した。昨年10月の世界のウチナーンチュ大会で「世界のリーダーズ・シンポジウム」がありパネリストの一人として出席した。会議は「万国津梁基金」として目標額100億円を議決し、大きな成果を残した。会議を終えて突然琉球大の学生ら10人ほどがミュージカルを演じた。リーダーの神田青さんは「インターン生としてロサンゼルスでお世話になったお返しの公演」と言い、北米沖縄県人会にお礼をしたかったという。
 もう一つのイベント「レッツスタディーワールド=世界について学ぼう」プログラムで、西原中学校で講演した。終了後担当教諭仲程奈緒子さんと私を囲んで1年2組70人と一緒に写真を撮った。後日仲程さんは写真を真ん中に16人の感想文メッセージが貼られた色紙を私に贈呈した。
 その際、仲程さんは「素晴らしい経験をさせていただいたことに感謝します。生徒も一生の思い出になるでしょう。次回2016年のウチナーンチュ大会でも、ぜひ実行してほしいプログラムです。このような経験が生徒たちの将来に大きなインパクトを与えることは間違いありません。生徒たちはポジティブに生きる大切さとアメリカの大きさをあらためてかみ締めていました」と謝意を述べた。ちなみに色紙は今も私のオフィスの壁に掲げられている。
 「忘却とは忘れ去ることなり、忘れえずして忘却を誓う悲しさよ」とのナレーションで1952年に始まったNHKドラマ「君の名は」は絶大な人気を博したが、バーグマンの名言と合わせてもう一度「忘却とは何か」について考えてみた。
(当銘貞夫、ロサンゼルス通信員)