【島人の目】メードの向上心


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 メードといってもメードカフェのメードではなく、シンガポール、香港で一般化している家政婦メードのことである。シンガポールでは、フィリピン、インドネシア、最近ではミャンマーから女性たちがメードとして働きに来ている。多くのメードたちは田舎出身者が多いが、中には大学卒業者もいて驚きだ。

 最近、息子を塾に送った時に、以前、わが家でメードをしていたフィリピン人のノラさんがコンピュータークラスから出て来たのには驚いた。唯一の休日の日曜日を利用して勉強しているのだ。最近はメードたちを対象にしたコンピューターなどの技術系クラスができていることを報道で聞いていたが、びっくりした。
 特にフィリピン人は英語ができ、学歴もあるのでメード以外にも、オフィス、ホスピタリティー関連で働くことは可能であろう。実際、シンガポールでは、ホワイトカラーとして、各分野で高学歴や技術を持つフィリピン人が活躍しており、日本円で20万円以上の高給を得ている方々は多い。
 メードとして入国した彼女らも技術を身に付け、より良い環境で働くことを夢見ているのであろう。私の会社で採用活動をしていても、最近、フィリピン人で元メードという応募者も目につくようになってきている。
 シンガポールや香港では共働きが常識で、メードがいなければ子どもを育てるのは大変厳しく、メードたちの存在は大きい。しかしながら、メードの立場は弱く、一般市民より低く、差別される傾向もある。外国の地で、本国の家族のためにさまざまな困難に耐え、一生懸命働きながら、さらに向上心を持ち、頑張っている姿に大変刺激され、尊敬の念を持った。われわれも、うかうかしてはいられないと。
(遠山光一郎 シンガポール在住、会社経営)