【島人の目】アメリカ黒人の快挙


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 アンジェロ・ダンディーが死んだ。1950年代初期から2000年代にかけてアメリカ・ボクシング界の「リングサイドの魔術師」と呼ばれ、最も優れたトレーナーとして君臨した。15回の世界チャンピオンの試合を制覇した実績を持つ。彼が育てた世界ランクのボクサーは多いが、モハメド・アリとシュガーレイ・レナード、ジョージ・フォアマンらが最も有名である。

 ダンディーは1921年、兄弟姉妹9人の8番目としてフィラデルフィアの白人家庭で生まれた。あらゆる人種のボクサーを育てたが、一流選手はほとんどが黒人だ。シュガーレイは最近、ダンディーがいかに優れたトレーナーであったか自叙伝「リングサイドのドラマ」の中に記して出版したと、LAタイムズは伝えている。
 アメリカ黒人の近代史の転換期はエーブラハム・リンカーン大統領が黒人解放を宣言して、南北戦争で北軍が勝利した1865年と明記できるだろう。初期の黒人奴隷は名を持たなかったので、所有者の名前が与えられた。あれから150年がすぎ、近年の黒人人口は約4千万人(米国内人口の12%)。現在、米国内の刑務所の半数は黒人であるなど、いろんな問題を抱えながらも、あらゆる分野でアメリカ黒人は飛躍を遂げ、ついに黒人大統領まで選出するに至った。
 そして最近のこと、多くの白人バイヤーをさておいてマジック・ジョンソン投資グループが20億ドル(1656億円)でLAドジャースを買い取った。東部から来た白人のオーナーのフランク・マッコード夫妻が離婚騒動から、由緒ある名門ドジャースをめちゃくちゃにしてしまい、揚げ句の果てに倒産に追い込まれてしまった。その救世主が黒人のマジック・ジョンソンで、ロサンゼルス住民は大いに期待を寄せている。アメリカの偉大な一面が手に取るように分かり、興味深い。
(当銘貞夫、米ロサンゼルス通信員)