【島人の目】ガーデンシティー


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 シンガポールの計画的で緑を多く取り入れた都市計画は、同国を訪れるほとんど全ての人々が称賛する。確かに高層ビルが立ち並ぶ街並みの中に10メートル以上の大木が立ち並び、花も多く、街を歩いていても心地良さを演出してくれる。

ガーデンシティーの名に恥じない。ただ、自然と共存するのは並大抵のことではない。整備、手入れには多くの人手を要するが、シンガポール人はこのような作業はしない。こうした3Kの仕事はインドなどの南アジアを中心とする外国人労働者の仕事である。
 害虫などの問題は?とよく聞かれる。シンガポールではデング熱の危険のある蚊を中心に駆除するために薬品がよくまかれているのに気付く。また大木の大きな枝は大変危険で、激しいスコールなどの時期には枝の下敷きになって亡くなる方や車などが被害に遭うニュースも聞く。
 最近、12階に位置するわが家にハチが侵入し、メードが刺される事件が起きた。初めての訪問者に息子たちを含めてパニックになった。よく見ると2匹のカップルである。2匹が同時に侵入してきたことに違和感を持ち、ハチの巣の駆除が行われたのか?と感じていた。
 翌日、団地周辺を歩いていると周りの木々の枝が切られ、きれいに整備されているのに気付き、歩いていると1匹、2匹、なんと数十匹のハチの死骸が散らばっているではないか。整備時に巣が処分されたのであろう。家族がハチに刺されるのは困るが、あの2匹のハチも住む場所を失い、まさに必死に安住の地を探していたのであろう。自然との共存の難しさを感じた。
(遠山光一郎 シンガポール在住、会社経営)