【キラリ大地で】アメリカ 高里太さん(日本レストラン・オーナーシェフ)


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「沖縄そばがアメリカ人に浸透し、知名度を確立してほしい」と語る高里太さん

夢は沖縄そばの知名度確立
 バージニア州にある「招き猫」という名の日本レストランを訪ねた。店の壁の棚には300個以上の「招き猫」の置物が所狭しと飾られている。店名にちなんで、なじみの客たちからの贈り物だそうだ。

 その店のオーナーシェフとして、すしをにぎる高里太さん(52)=那覇市首里出身。土曜日とあって、店はアメリカ人の家族連れや若者らでにぎわい、カウンターからは常連さんが高里さんと冗談を交わす笑い声が聞こえ、店は終始和やかな雰囲気だった。
 高里さんは沖縄で電気関係の仕事をしていたが25歳のとき、転機を迎えた。学生時代に好きだった英語の勉強をしたいと渡米し、語学学校に通い英語の勉強に集中した。その間日本レストランで皿洗いの仕事を始め、しばらくしてすし職人の修業をするようになる。
 80年代後半、折しも米国ではすしブームの波が押し寄せていた。高里さんは「機械などの技術畑の仕事をしてきたが、客商売はしたことがなくて不安だったが、お客との会話が楽しく、すしシェフの仕事が合っていた」と話す。
 日本レストランは1992年の調査では全米に3千軒しかなく、今ではその約5倍以上の1万5千以上の日本食店が営業されているという。高里さんは「アメリカでは健康志向の人が増え、肉より魚を食べるようになってきた。このかいわいは舌が肥えていて知識も豊富な客が多い。アメリカ人の好みはマグロよりサーモン」と話す。ワシントンDC付近でも日本レストランは増えてきて、しのぎを削っている。
 そんな中、ネット上で招き猫の客からのコメントには「サービスが良く、居心地がいい」などとの評価が多く、Taoさんとの愛称で呼ばれている高里さんのことを「ユーモアーのセンスがあり、フレンドリーだ」との声も。五つ星マークをつけた人が多く「天ぷら、すし、一品料理がおいしい」との評価があった。
 食通の日本人ライターからは「和食が食べたくなるとつい足を運びたくなる店」とあった。高里さんは「ネットのおかげで若者たちが検索し、評判が評判を呼んで常連客も増え、売り上げも上がり、安定してきた」と笑顔。
 県系人にとって何よりうれしいのは、招き猫では沖縄そばがメニューにあることだ。高里さんは「麺はハワイ産を使っているが、スープのだしは豚骨、鶏がら、昆布にかつお節を使い、試行錯誤を続けたこだわりの出来栄え」と言う。
 ライフワークは、日本文化のアピールに一役買うことで、すしのにぎり方に関して実演するなどしている。最近はアメリカの大学のジャーナリズムの学生が沖縄をテーマに映画を撮ることになり、ロケの場を提供した。
 高里さんは「将来、沖縄そばがベトナムのホーのようにアメリカ人に浸透し、知名度を確立してほしい」と夢を語った。