【島人の目】銃社会


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 先月コロラドで起きた映画館無差別殺傷事件など、銃犯罪が後を絶たないアメリカ社会。日本人は「銃があるから多くの犯罪が起きる」と考えるが、ニュースの映像で「銃を所持していたらこんな大惨事にならなかった」との声が多いのに驚いた。

 ここバージニア州は銃ディーラーが多いことで知られ、定期的に「Gun Show」(銃の即売見本市)が催される。入場料を払い、会場に入ってみた。そこには70店以上の出店があり、それぞれの店舗にはハイテク化された機関銃からアンティークの銃、ライフル、銃弾、はたまた日本刀や手裏剣、サバイバルナイフなどが置かれている。日本兵への寄せ書きが書かれた日章旗も売られていて、ちなみに値段は100ドル。大戦時の各国の軍服やヘルメットまで売られているのには驚く。
 全米には20万近くの銃販売業者がいて、これはガソリンスタンドより多いと言われている。そして毎年300万丁の銃が出回っている。巨大な組織のナショナルライフル協会や米国銃所持者協会は「人を殺すのは人であって銃ではない」をスローガンに「銃による自衛は基本的人権」と大義名分をかざして莫大な利益を欲しいままにしている。まさに死の商人ではないか。
 ある店で護身用の銃が欲しいと試しに言ったら懇切丁寧な説明で250ドルの銃を勧められた。身分証明書になる運転免許証さえあれば即、自分の物になり、銃は運転免許証の取得より楽なのだ。
 2007年に起きたバージニア工科大学の銃乱射事件を受け、民主党議員らは「銃による悲劇が二度と起きないよう銃規制を強化する法案を作るべきだ」との主張をしていたが、今回のコロラドの襲撃事件では以前のような銃所持への抗議の声は鳴りを潜めた感じだ。銃規制の法案への道は遠く、仕方ないさー的諦めに似た思いがあるようだ。
 日本で無差別殺傷事件が起こるたび、もし米国のように誰もが自由に銃を所持できたらと考えると恐ろしくなる。親しくしているアメリカ人は「銃は人を殺すための物。殺人者になりたくないので銃は持たない」と言い、われわれ日本人はその健全な考えを持つアメリカ人の存在にホッとするのである。
(鈴木多美子、米国バージニア通信員)