【島人の目】差別からの解放、沖縄にも


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 「波止場」「エデンの東」「欲望という名の電車」「草原の輝き」などの名作でアカデミー賞やゴールデングローブ賞を受賞した米映画監督のエリア・カザンはオスマン・トルコのイスタンブールでギリシャ系の両親の下に生まれた。

 本名はエリアス・カザンジョグラスで、4歳のとき、トルコの圧制・差別を逃れ、幾多の苦労の末「自由を求めて」家族でアメリカ・ニューヨークに移住。名画「アメリカ、アメリカ」はそういった体験をカザン自身が小説、映画化、監督した。
 エール大学で演出を学び、ピュリッツアー賞を受賞。それを機にハリウッドに移住。新しい演技法の教授をし、マーロン・ブランドー、ジェイムス・ディーン、ウォーレン・ビーティー、ヴィヴィアン・リーのほか、名優と称される俳優を数多く生み出した。
 2003年に他界、アカデミー名誉賞を授与された。一方で、共産党員告発事件で批判の的にされたエピソードも残されている。
 ライオンがほえるマークで有名な米映画会社MGMの前身「ゴールドウイン・ピクチャーズ」創始者で、映画プロデューサーのサミュエル・ゴールドウインは本名をシュムエル・ゲルフィッシュといい、ポーランド系ユダヤ人としてワルシャワに生まれた。
 ヒトラーのユダヤ人迫害を逃れ、イギリスに渡り、さらに「自由を求めて」アメリカに移住した。その過程は筆舌に尽くし難いほどの苦労であった。差別を逃れ、自由のためにひたすら歩いた。歩行距離1千キロに及ぶだろうといわれる。アメリカに到着した後も「成功する」ために3回も改名を余儀なくされた。
 第2次世界大戦前、日系アメリカ人12万人余が強制収容所に入れられた事実があるが、これは人種差別によるものだったとして、アメリカ政府はレーガン大統領時代に謝罪文と賠償金を支払った。
 県民が直面している「基地縮小の願い」はオスプレイの配備で後戻りしたような感がある。9月9日に県民はオスプレイ配備反対の県民大会を開いた。その数は10万人余といわれる。多くの差別からの解放を希望する自由人を受け入れたアメリカ、県民の悲願「米軍基地の束縛からの解放―自由」を真剣に考慮すべき時期に来ているのではないかと考える。
(当銘貞夫、ロサンゼルス通信員)