識名トンネル監査委員勧告 県の重過失、異例の認定


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 県監査委員は26日、識名トンネル虚偽契約問題にかかる住民監査請求に対して、補助金返還額の利息分約7千万円を損害として認定し、補填(ほてん)のために関係人らを再調査し、必要な措置を講ずるよう知事に勧告した。監査委員事務局が把握している1984年以来、初めての勧告だ。

 84年からこれまで住民から県への請求は24件。そのうち、監査要件を満たしていないことから監査対象にしない「却下」が15件、監査した結果、住民側の請求に正当な理由がないとする「棄却」が5件、監査委員の意見が割れた「合議調わず」が4件だった。
 「勧告」という極めて異例な結果には、工期を偽って契約したという手続きそのものの重大性が反映した。違法な行為などで、地方公共団体に損害を与えた者に損害を請求する場合、その者に「故意または過失」があったことが要件とされている。監査委員は監査結果に至った判断の中で「虚偽契約およびそれに至る行為、手続きそれ自体が過失ないし、重過失」とし、損害認定に至った。
 同工事を請け負った大成建設企業共同体(JV)側にも厳しい結果となった。これまでJV側への賠償責任について、県は「(責任を認めるものとそうでないものの)両方の意見がある」として、対応を保留していた。しかし、監査委員はJV側にも「責任の一端が認められる」と判断し、補填のための再調査対象となる「関係人」の中にJV側も含まれることを示した。
 一方、4件の監査請求のうち、09年以前に発生したとされる工事費用の総額や増額分を損害とした請求は請求期間を過ぎており、「却下」となった。問題の本質となる工事費用の増額については、現行の住民監査制度の限界で監査が実施されていない。今後も引き続き、県議会の百条委員会や県警の捜査で真相究明を図り、責任の所在と問題が生じた背景をあらためて明確にする必要がある。
(田吹遙子)