32軍壕保存 県、年度内に方針 安全限定、埋め戻しも


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 沖縄戦時、首里城地下にあった旧日本軍第32軍司令部壕の保存をめぐり、県環境生活部(下地寛部長)が沖縄戦の研究者の助言を求めず、安全面に限定して今後の維持管理の在り方を検討していることが22日までに分かった。

県は7月に日本工営沖縄事務所と契約し、地質や崩落の危険性などを確認する調査を実施している。日本工営が並行して土木工学や地滑りに関する専門家ら5人から意見を聴取している。
 来年1月に日本工営が同部へ調査報告書を提出、県庁内部で検討し、本年度中に県の方針を決める。調査結果によっては埋め戻しも検討する。同壕説明板設置検討委員会の委員から「沖縄戦の研究者の意見も聞き、歴史的な面からも検討してほしい」との指摘もあるが、同課は安全性のみを考慮する考え。
 2月の県議会2月定例会で下地部長は、同壕の保存の在り方を検討するための第三者委員会設置を表明、同部は沖縄戦に詳しい専門家の参加も予定していた。しかし同部はその後、第三者委を設置せず、歴史の専門家から意見聴取しない方向へ転換した。同部平和・男女共同参画課の原田直美課長は「これまでの調査でも崩落した箇所があると報告を受けている。壕の上では都市開発が進んでおり、安全性の面から専門家の意見を聞きたい」と話している。
 同壕説明板設置検討委員会の村上有慶さんは「最初から埋め戻す意向ではないか。32軍壕は県教育庁が実施している戦争遺跡詳細確認調査の対象だ。知事部局だけで決めていいのか」、新城俊昭さんは「中に入らず見学できる工夫もできるはずだ。32軍司令部壕は軍の中枢で重要な意味を持つ。沖縄戦研究者の視点が欠落したままの判断には納得できない」と県の対応を批判した。