「沖縄ありき」の構図露呈
森本敏防衛相が26日の退任前に、米軍普天間飛行場を名護市辺野古沖に移設する現行案が軍事的、地政学的でなく政治的要因で決定したことをあらためて強調した。野田佳彦首相から「安全保障の第一人者」として招請された森本氏の発言は、政府が沖縄の「地政学的」な優位性を理由に在沖海兵隊の駐留意義を主張してきたことを覆し、県外で受け入れ先がないとして、県内に押し付ける構造が再びさらけ出された。在沖海兵隊の「地理的優位性」「抑止力」について、県民に再び強い疑問を抱かせるものとなった。
森本氏は25日の閣議後会見で、米海兵隊は陸上部隊、航空部隊、後方支援部隊の三つの部隊が一体性を持って運用されることで、即応性や機動性が確保でき、抑止の機能を保っていると説明。三つの部隊で構成する海兵空陸任務部隊(MAGTF)を「すっぽりと政治的に許容できる地域があれば、問題はない」と述べた。軍事的な観点からは、県内移設に固執する必要性はないとの考えを示したものだ。
森本氏の発言は、2010年5月に普天間飛行場の県内移設方針に回帰した鳩山由紀夫首相(当時)の言葉に共通する。鳩山氏は退任後の11年初頭のインタビューで「辺野古しか残らなくなった時に理屈付けしなければならず、『抑止力』という言葉を使った。方便と言われれば、方便だった」と強調。政治的判断による「県内」ありきの「後付け」の説明だったことを告白した。
防衛省幹部は「普天間飛行場を受け入れる貴重な自治体は沖縄しかない。辺野古区は長年、米軍と良好な関係を築いている。他府県では難しい」と述べ、代替基地を受け入れる素地があると強調する。
衆院選では具体的な移設先を明言していなかった次期首相の安倍晋三自民党総裁は21日の記者会見で、「辺野古に移設する方向で地元の理解を得るため努力したい」と述べ、日米合意に沿った県内移設実現を目指す考えを早々と示した。
防衛庁防衛局、駐米日本大使館などに勤めてきた防衛問題の論客の森本氏の「軍事的には沖縄でなくてもよい」という見解は一貫している。26日に発足する安倍政権が「事実上、実現不可能」(仲井真弘多県知事)な現行計画を推し進めれば、民主党内閣と同様、安全保障政策や外交面で立ち往生するのは避けられない。新内閣が「地政学」「抑止力」という虚構に終止符を打ち、政治責任を持って、普天間飛行場の移設問題に対応できるか、本気度が試される。(問山栄恵)