2013年 本紙海外通信員の抱負


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 海外で活躍する“熱い”ウチナーンチュの話題を紹介している琉球新報海外通信員に新年の抱負を寄せてもらった。昨年は初めて若者ウチナーンチュ大会が開かれ、ウチナーアイデンティティーなどの課題があらためて浮上した。ことしはその取り組みを広げていく大事な年。海外通信員の決意を紹介する。

【ドイツ】外間久美子/ドイツの風 届けたい
 新年明けましておめでとうございます。昨年夏の沖縄での9年ぶりのコンサートでは皆さまに大変お世話になりました。感謝申し上げます。
 トリオ仲間たちも沖縄の海はもちろんのこと、特にウチナーのチムグクルに感動し、すっかり沖縄ファンになってしまったようだ。これまでに沖縄を訪れた何人かのドイツ人友人らも沖縄が大好きになり、リピーターが増えているこのごろだ。
 そんな折、ことしのベルリン国際映画祭で、沖縄がロケ舞台となった映画「カラカラ」(クロード・ガニオン監督 日仏合映画)が上演されるといううれしいニュースが飛び込んできました。沖縄の景色がドイツで、それも世界中から集まる人々に見ていただける…と想像するだけでワクワクする。
 ベルリンに行って取材できないのが残念でならないが、情報網を張り巡らし、なんとか皆さまに反響をお伝えできないものかと思慮している。沖縄からの訪問の少ない地ではあるが、少しでも多くドイツの風を皆さまにお届けできたらと思う。どうぞことしもよろしくお願い致します。2013年の皆さまのご健康とご多幸をお祈り申し上げます。

【イタリア】仲宗根雅則/「アラブの春」訪れ待つ
 ことしは地中海域のアラブ諸国に民主主義が根付き、自由で安全な社会が出現することを強く願っている。僕は1年に1度地中海を巡る旅を続けている。ヨーロッパに長く住み、ヨーロッパを少しだけ知った現在、西洋文明の揺らんとなった地中海世界をじっくりと見て回りたいと思い立ったからだ。
 計画はざっとこんな感じだ。イタリアを基点にアドリア海の東岸を南下しながらバルカン半島の国々を巡り、ギリシャ、トルコを経てシリアやイスラエルなど中東各国を訪ね、エジプトからアフリカ北岸を回って、スペイン、ポルトガル、フランスなどをぐるりと踏破する、というものだ。
 しかし、2010年にチュニジアでジャスミン革命が起こり、やがてエジプトやリビア、シリアなどを巻き込んでのアラブの春の動乱が続いて、中東各国には足を踏み入れることができずにいる。
 昨年はトルコを旅し、その前にはギリシャとクロアチアを2回ずつ巡っている。そろそろアラブの国にも入りたい。できればシリアに。ことし、もしもその夢がかなうなら、それは内戦状態のシリアに平穏が訪れたことを意味する。ぜひそうなってほしい。

【ロサンゼルス】当銘貞夫/「万年青年の志」で取材
 ロサンゼルス郊外に所在する北米沖縄県人会にとってことしは多忙な時期となる。7月に「第2回世界の若者ウチナーンチュ大会」が開催されるからだ。すでに沖縄と米国内の若者10人がロサンゼルスを訪れ、話し合いの機会がもたれた。
 若者ウチナーンチュの規定は18歳から35歳までとなっている。しかしその他の年齢の者はオブザーバーとして参加できるのである。北米沖縄県人会はホスト役を担っているので私は理事の一人として大会をサポートしていかなければならない立場にある。
 もう一つの課題は琉球新報通信員として取材活動をすることだ。すでにその関連の記事を書いて掲載されたものや、これから掲載されるものもある。本社から特派員が派遣されることも予想されるが、私はむしろ当日よりも前段階での「若者たちとの触れ合い」に重点を置いて取材に当たりたいと思っている。
 団塊世代の青春時代60年代のアイドル作家で「陽のあたる坂道」「若い人」など若者を描いて名を残した大作家に石坂洋次郎さんがいる。作品は映画化され多くのファンに親しまれた。彼のような大作家の境地に入ることはできないまでも、私は「あいつは万年青年の志だよな」と言われるようなジャーナリストになりたい、というのが抱負である。

【イギリス】森田恵美子/「結」の精神で精進
 新年明けましておめでとうございます。昨年は、わが英国県人会にとって30周年という節目の年だった。振り返ると毎年6月恒例のロンドンおきなわデーでは、単独県の開催にもかかわらず過去最大の8千人を動員し、また4月に行われたアート展LOOCHOOも成功裏に終わり、市民レベルでの英国と沖縄県の交流に、県人会ならびにロンドン三線会のメンバーも確かな手応えを感じている。その手応えと同時に私の胸に小さな疑問が浮かんだ。なぜ沖縄という日本の端っこの小さな島がこれほどに人々に愛されるのか?
 以前、私は自分の沖縄のイメージを1本の綱として表現した。その綱は緩く張られ、時に地に擦れて土に汚れ、風が吹けば、それになびき、多少汚れはあるものの、その繊維の一本一本は泥や土を含んだせいで、強度を増し絶対に切れることのないロープだと。
 2012年はまさに沖縄県にとって、そのような年ではなかっただろうか?
 外部からの数々の事柄に海外にいながら一喜一憂、憂う日の方が多いこともあったが、それでも日々の暮らしを守り、たくましく生きている、そんな沖縄人のアイデンティティーは時に私を勇気づけ、そのおおらかな県民性と土地の持つ目に見えない力が多くの外国人を魅了するのだと思った。
 沖縄県は日本の端の小さな島だが、皆さんが想像する以上に海外、少なくともロンドンではいろんな意味で認知されている日本の県だ。その島を故郷に持つ私の使命としてことしもできる限り、英国と沖縄を「結・ゆい」の精神で結ぶべく精進したい。そして最後にロンドンにめんそーれ!

【アルゼンチン】大城リカルド/県系社会の文化紹介
 日本も新しい安倍内閣が発足し、経済のことや外交のことも日々、紙面をにぎわせていると思う。アルゼンチンも日本と同様、景気が問題になっている。それでも、アルゼンチンのウチナーンチュは明るく頑張っている。
 今はもう1世の世代から2世、3世へと代わり、4世も出てきている状態だが、沖縄県人会館では三線、琉舞、太鼓などの演奏から、沖縄食などもあり、沖縄と変わりない。
 むしろ、沖縄以上にウチナーグチが飛び交っている。
 また、現地日系社会は、その70%が沖縄県出身であることからも、世界で一番遠い親日国アルゼンチンの国民は沖縄県系社会と直接接しており、その独特な文化が認められている。
 そういうアルゼンチンをことしもお届けしていきたい。

【アメリカ】鈴木多美子/沖縄女性の“今”伝える
 尖閣諸島領土問題で沖縄県周辺がきな臭くなってきた。こちらに住む県人らと会えばその話になり「沖縄は大丈夫かね」と心配の声。またある人からは米国政治学者によって投稿された「魚釣島は中国に属す」の内容の記事が送信され「私は腹の虫が治まらない」と憤慨のメールが届いたりした。
 そんな沖縄を憂う沖縄会の縁の下の力持ち的存在の沖縄女性たちはもうほとんどが子どもらを自立させ悠々自適の生活をしている。沖縄の本土復帰前後に国際結婚し、苦労しつつもそれぞれの言葉、文化の壁を乗り越えてきた。人生の師と仰いでいる彼女たちから学ぶことは多く、私は懇意にしてもらっている幸運をありがたく思う。
 2世たちの時代になったが、昨年から取材を始め、母と子の絆や2世の活躍をしたためている。
 さてことし、ワシントンDC沖縄会は創立30周年を迎える。沖縄の文化、芸能に触れ、ウチナーンチュとしての思いを新たにする恒例の新春会は創立30周年祝賀会として4月6日に行われる。

【ハワイ】名護千賀子/2世の貴重体験、記事に
 ウチナーンチュがハワイへ移民し100年以上経過した現在、2世の高齢化は、言うまでもなく、沖縄コミュニティーの中心となって活躍しているのは、3世、4世だ。
 1世や2世がレガシー(遺産)として残してきた沖縄の文化というものが、ハワイ沖縄連合会のイベントや琉球芸能活動、世界のウチナーンチュ大会などを通して、若い世代へ継承されてきた。
 また5世や6世が、沖縄の文化を継承し、さらに次の世代へ伝えていけるよう、未来への企画も進んでいる。このような中で、新たな年には、お互いを思いやりながら楽しく前進し、これまで培ってきたものをさらに発展させることを、コミュニティーに期待する。
 戦前戦後という時代を生き抜いてきた2世、または、帰米2世の体験は、貴重であるにもかかわらず記録が少ない。
 ことしは、できるだけ多くの方に、話を聞き、記録に残し記事として伝えていきたい。

【ドイツ】外間 久美子
【イタリア】仲宗根 雅則
【ロサンゼルス】当銘 貞夫
【イギリス】森田 恵美子
【アルゼンチン】大城 リカルド
【アメリカ】鈴木 多美子
【ハワイ】名護 千賀子