【島人の目】チェノーネ


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 イタリアの大みそか恒例のチェノーネが今年もやがて始まる。チェノーネは家族や友人知己が集まって繰り広げる年越しの大食事会である。夜遅くに始まって、新年をまたいで延々と続けられる。年明けと同時にシャンパンの雨が降り、花火が打ち上げられ、爆竹が鳴り響く中、人々はひたすら食べ、しゃべり、歌い、大笑いする。
 イタリア料理のフルコースというのはただでも量が多いが、チェノーネで供される食事の量はその2倍にも3倍にもなる。
 前菜のサラミや生ハムなどがところ狭しとテーブルに並べられて食事が始まり、次に幾種類ものパスタが運ばれる。それに続くメーンコースが物すごい。肉料理の山また山である。魚料理も加わる。付け合わせの野菜類もこの時に盛大に卓に載る。それらを平らげると果物とデザート。長い食事中に消費されるワインやシャンパンの量も半端ではない。
 チェノーネでは一般的な食べ物に交じって各地方独特の食材も供される。良く知られているのはナポリ地方の「カピトーネ(大ウナギ)」。ウナギを豪快に切断して油で揚げる。脂っこいその料理には、お金に似た正月らしい縁起物、ということで必ずレンズ豆が添えられ、わが家のチェノーネには僕の好きなザンポーネが良く出る。ザンポーネは豚の足をくりぬいて皮の中に肉や脂身をミンチにして詰め込んだものである。形は大きなテビチという感じ。味はどちらかというとポークランチョンミートに近い。が、ポークよりもこってりとしていて、しかもイタメシだけにポークよりもはるかにうまい。
(仲宗根雅則、イタリア在住・TVディレテクター)