那覇市首里金城町にある国指定の天然記念物「首里金城の大アカギ」が生存の危機にひんしている。記念物を構成する6本のうち、1本が昨年9月の台風で倒木。他の5本もシロアリなどに侵食され、危険な状況だ。管理する那覇市教育委員会文化財課は、2013年度予算で残る木の腐食具合を調べるための調査費を確保し、状況を把握した上で対応を検討する方針だ。
大アカギは同町の御嶽・内金城嶽(ウチカナグスクタキ)の境内に生えている。樹齢は推定200~300年で、長年、地域の「御神木」として親しまれていた。沖縄戦前までは首里城周辺でもアカギの巨木が見られたが、戦争でほとんどが焼失。市街地で巨木が群生して見られるのは全国でも珍しいという。1972年の本土復帰とともに国の天然記念物になった。
6本のうち1本は、昨年の台風17号の影響で根こそぎ倒れ、民家の屋根を壊すなどの被害を出した。倒れた木を調査すると、根が弱っており、植え直しても根付かない状況だった。残る木も、幹の部分が裂け、地面から半分程度浮いているものもある。ワイヤなどをつなぎ倒木を防いでいる状況だ。シロアリの被害も大きいという。
文化財課は「定期的に診断を行うなど、万全の態勢で保全に挑むべきだった。管理が十分ではなかった」と反省した。一方で、大アカギが高齢なため、強い薬を使うシロアリ対策を施すと樹木の生きる力を弱める懸念もあるという。
同課は「市民の生命・財産に影響を出さないための安全性確保と共に、御神木、文化財として保存・継承するためにどうするか。しっかり対策を考えたい」とした。
首里金城町で生まれ育ち、自治会長を20年近く務めた高江洲盛喜さん(87)は大アカギについて「幼いころは登って遊ぶなと言われるなど、大切にしてきた木だ」と振り返る。「木も生きており、枯れてしまうのはやむを得ない。だが金城町を訪れる観光客は石畳と大アカギが目的だ。難しいこともあるだろうが、金城町のためにも残してほしい」と期待した。