安倍首相来県 政府“復縁”へ躍起 知事標的に強まる圧力


社会
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 会談冒頭の「頭撮り」が終わり、報道陣が退席した数分後、安倍晋三首相と仲井真弘多知事は、同席していた両副知事や山本一太沖縄相らを残して別室に移動し、約30分間、2人だけで会食した。県幹部は「話題は沖縄振興全般では」と言うが、事務方も交えない密談の内容をめぐり臆測を呼ぶ可能性は高い。安倍首相は会談後、記者団に「仲井真知事と私との個人的な信頼関係をつくっていくことはできたのではないか」と胸を張った。

■“差し”にこだわり
 第2次安倍内閣発足後、初来県した安倍首相は、普天間飛行場の名護市辺野古への移設について「地元の声を聞きたい」との発言と裏腹に、市町村長や経済界との面談はなかった。民主党政権下で鳩山由紀夫、野田佳彦両首相(当時)が市町村長や経済団体トップと意見交換したのとは対照的だ。
 2人だけの会食は官邸側からの要望だった。県庁ならフルオープン(公開)が原則。民主党政権時、防衛省から非公開を打診された際も県は「沖縄ではオープンが原則」と譲らなかった。しかし今回は首相側がホテルに招き、事務方を排した“差し”で会うことで信頼醸成を印象付けた。
 政府関係者は「名護市長さえ賛成すれば仲井真知事は県内移設に傾くだろうから、今は知事としか会わない」とし、辺野古移設の実現には仲井真知事との関係構築が重要とする姿勢を見せる。
 一方の仲井真知事は「首相と関係構築できたか」との質問に、「信頼関係というのは長い時間をかけていろんなことを処理しながら出来上がっていくもの」とかわした。

■突破の糸口探る
 訪米前の埋め立て申請を否定した安倍首相発言を県幹部は「申請っていう手続き的なことを、首相に御用聞きみたいにさせるってことはないだろう」と冷静に受け止める。
 仲井真知事も「公式には日米両政府は基本的な線は出している。それは現実的じゃないですよ、という僕らの意見を聞いていただけるのか、はこれからだ」と政府と沖縄の議論が平行線であるとの認識を示した。
 今回、安倍首相が仲井真知事に直接「米国との合意の中で進めたい」と宣言したことで、普天間問題の進展の第一歩と米側にも報告できるとの見方がある。
 「(民主党政権下の)3年間で国と沖縄の信頼関係は崩れた」と繰り返す安倍首相。今回の「知事との個人的な信頼関係」(首相)で、知事をターゲットに辺野古移設の突破を図ろうとする政府の圧力はますます強まりそうだ。(島洋子)