独特の響き 聴衆包む 琉球フィル


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エントランスホールの独特の響きに包まれて演奏する琉球フィルハーモニックストリングオーケストラ「イオ」=2日、県立博物館・美術館

 琉球フィルハーモニー管弦楽団(上原正弘代表)の「エルミタージュミュージックプロジェクトin沖縄」が2、3の両日、那覇市の県立博物館・美術館で開かれた。

演奏は同楽団の弦楽奏者らで構成する琉球フィルハーモニックストリングオーケストラ「イオ」。指揮は同楽団首席客演指揮者で、エルミタージュ室内管弦楽団の首席客演指揮者でもある藤野栄介が務めた。コンサートマスターの宮良美香(バイオリン)ら、ソリストたちの演奏が時に競い合い、互いの魅力を引き出し合いながら緻密な調和を奏で、新たな文化交流拠点の形成を目指すプロジェクトの門出を飾った。
 同プロジェクトは、ロシア国立エルミタージュ美術館で行われている音楽による国際交流プロジェクトを沖縄に取り入れ、県立博物館・美術館を音楽と美術を核とした多分野の人々の交流拠点にしていくことが目的。同楽団が昨年7月に一般社団法人化してから初めて開催するプロジェクト。
 イオは同楽団メンバーで構成する21人編成の弦楽オーケストラ。「イオ」の名前はバッハのカンタータ140番の歌詞にあるラテン語の感嘆詞に由来する。
 2日は同館エントランスホールでの無料コンサートで、子どもたちから高齢者まで幅広い世代がフロアから階段までを埋め、演奏に聴き入った。チャイコフスキー「弦楽セレナーデ」第1楽章、バーバー「弦楽のためのアダージョ」などを藤野の躍動感ある指揮のもとで演奏。天井が高く開放感ある造りのエントランスホールは弦楽の旋律を独特の響きで包み、来場者を演奏に引き込んだ。ソリストはバイオリンを宮良のほか野口友江、大友幸、中村祐実子。チェロを城間恵、猪又麻衣子が務めた。
 3日は同館講堂での特別演奏会。「弦楽セレナーデ」は全楽章を演奏したほか、ビバルディ「2つのチェロのための協奏曲」「4つのバイオリンのための協奏曲」なども演奏した。アンコールで演奏した「ザ・ファイナル・タイムトラベラー」は同楽団ゲーム音楽ディレクターで作曲家の坂本英城が今回の演奏会のために書いたというゲーム音楽。ゆったりとした旋律が描く壮大な世界観で聴衆を酔わせた。(宮城隆尋)