本が結ぶ人の縁 著書で祖母紹介、孫と対面


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新聞記事を通じて対面した玉城弘康さん(右)と加藤久子さん=糸満市西崎町の「糸満漁民食堂」建設地

 【糸満】法政大学沖縄文化研究所国内研究員として、糸満の漁民文化を研究する加藤久子さん=横浜市=がこのほど来県し、糸満市内で漁民文化をコンセプトにしたレストランの開業を控える玉城弘康さん(34)=同市出身、豊見城市在住=と対面した。

加藤さんは昨年、糸満で魚屋を営んでいた玉城さんの祖母・金城芳子さん(84)を著書で紹介。玉城さんがこの本を読んでレストラン開業を決めた本紙の記事を加藤さんが目にして、今回の対面につながった。
 加藤さんは昨年3月、28年にもおよぶ糸満、八重山での聞き取り調査の成果をまとめた「海の狩人沖縄漁民―糸満ウミンチュの歴史と生活誌」(現代書館)を出版した。
 本の冒頭で、仲間3人で魚屋を営む芳子さんの日常を紹介。この本を読んだ玉城さんは「運命的なものを感じた」と言い、レストラン出店への思いを強くした。この経緯を報じる1月4日付本紙記事を読んだ加藤さんが、取材ノートに残る連絡先に電話して今回の対面が実現した。
 加藤さんは、現在入院中の芳子さんとも再会し、互いに喜んだという。加藤さんは「本が人と人とをつなげてくれた」と感慨深げに語る。
 玉城さんは、2月20日に市西崎町にレストラン「糸満漁民食堂」をオープンする。海人伝統の「魚汁」など、海人料理を現代風にアレンジして提供する。建物の外観は、古来、漁民がサンゴ石灰岩を積み、宅地を造成した歴史を踏まえ、石積みで建築した。
 加藤さんは「だんだん消えていく伝統を孫世代が継承してくれていることがうれしい」と話し、玉城さんにエールを送った。
 玉城さんは「市内に多くの『魚汁専門店』ができるくらいまで、魚汁を発信したい」と意気込んでいる。

英文へ→Book helps author meet grandson of working woman in fishing town