岸田外相初来県 米向け「進展」演出


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仲井真弘多知事(右)と会談する岸田文雄外相(左)=16日午前、那覇市のANAクラウンプラザホテル沖縄ハーバービュー

「辺野古」文言は封印

 「今回の訪問は沖縄の皆さまとの信頼関係構築の一歩となることを念頭に、さまざまな意見を聞かせていただいた」。帰任前の記者会見で、岸田氏はこう口調を強めた。

■市長会談外す

 仲井真知事との会談で、米軍普天間飛行場の辺野古移設を盛り込んだ日米合意に基づいて取り組む考えを示しつつ、県民から反対が強い「辺野古移設」の文言は一切、発しなかった。
 県幹部は「大変慎重な姿勢だった」と述べる。岸田氏が「県民の意見を聞く」と強調したことも併せ、沖縄との関係構築に気を遣っていたとの認識を示した。
 ただ、会談の発言で沖縄側への配慮が目立ったものの、岸田氏は普天間移設先の名護市の米軍キャンプ・シュワブ視察は日程に入れながら、市長会談は日程に入れなかった。
 記者会見で「調整した結果、今回の日程が出来上がった」と説明。会談を入れなかった理由を問われ「どの方にお会いするかと言い出すと大勢いる。今後とも多くの皆さまの声を拝聴できるよう努力したい」と述べるにとどまった。
 記者から「沖縄の反発覚悟で辺野古移設を進めるのか」「移設先は辺野古以外にないのか」との問いには「現行の日米合意に基づいてということだ」と強固な姿勢を示した。

■“ごり押し”も

 普天間の辺野古移設について、県内の状況は自民党県連や公明党県本部が反対し党本部との“ねじれ”がある。
 岸田氏は「組織の中の意思疎通を図るべく努力する。政府として基本的方針の下で結果を出すべく努力をしないといけない。引き続き汗をかきたい」と述べ、県連に対し辺野古移設へ、方針転換を働き掛ける考えを示した。
 一方、翁長政俊自民党県連会長と糸洲朝則公明党県本代表は、これまで「手のひらを返すことはできない」「政治的駆け引きで揺れる現状にない」と述べ、県内移設反対の立場を明確にしている。
 党本部が強引に方針転換を迫れば、県連側から強い反発が起きるのは必至だ。
 岸田氏の今回の来県で、仲井真知事が岸田氏と朝食を挟み非公開の会談をし、公開の会談で和やかなムードも見られた。県幹部は「互いの立場は踏まえた上だ」と、普天間移設についての立場が変わらず平行線であることを指摘。大臣らが来県を重ねても、「県外」方針が変わらないことを強調する。しかし、関係構築を強調する岸田外相、就任約2カ月で4回の来県をするという山本一太沖縄相も含め、政府は沖縄包囲網を強め始めている。
(内間健友)