脱貧困へ教育重要 名桜大が公開討論


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貧困の連鎖を断ち切るために、研究者らが報告する公開討論会=12日、名護中央公民館

 【名護】名桜大総合研究所主催の公開討論会「沖縄から考える貧困と格差」が12日、名護中央公民館で開かれ、約70人が参加した。討論会には研究者をはじめ、行政の福祉担当者、学校・支援活動の現場から報告があり、貧困の連鎖を断ち切るために教育支援の重要性や支援を受ける人が負い目を感じない「尊厳ある支援」の必要性が挙げられた。

 名護市役所社会福祉課の東江靖典さんは、最近5年間で名護市の生活保護費(扶助費)、保護世帯がともに倍増していると報告。保護世帯の高校進学率は、支援制度が整った2012年度は一般世帯とほぼ同じだったものの、10、11年度は10ポイント以上低いなどの例を挙げ「親が中学卒だと子どもに進学を勧めないこともある」と指摘。
 将来、自立するためにも「要保護世帯になる以前に、学校を含め進学を働き掛ける必要がある」と訴え、名護市が取り組む学習支援制度を紹介した。
 北部地域の小学生に放課後学習支援を行う「やんばるゆいまーる塾」の宮川めぐみさんは従来の「貧困=自己責任論」でなく「社会的排除」と捉え直す概念を紹介。「社会の仕組みを変えることだ。多様な居場所があり、多様な考え方の大人が活躍する場所が必要」と指摘した。
 名桜大の李鎮栄教授(文化人類学)は貧困層に有利子で資金を貸し付け、問題解決に導いたバングラデシュの事例を挙げ「(被支援者に負担がない)負い目を負わせる給付は人間の尊厳を壊す。プライドを損なわないよう給付に条件を付けることも検討する必要がある」と話した。