ロックリア米太平洋司令官が5日、下院軍事委員会に普天間の進展を強調した。2月の日米首脳会談で安倍晋三首相がオバマ大統領に「3月中の埋め立て承認申請」を伝えており、日本政府の前のめりの姿勢が同司令官を通じて議会にも伝わった形だ。
県内移設に反発する沖縄側の反発は必至だが、国防総省側は「日本の国内問題だ」としており、日本政府に責任を負わせ、県内移設を進める構えだ。
ロックリア司令官は「彼ら(日本政府)が沖縄の別の場所に移設してほしいとわれわれに求めているのに、実際は停滞している」と指摘。普天間飛行場移設問題が解決しなかった原因を日本政府の決断の遅れがあるとの見方を示した。
国防総省関係者は本紙の取材に「沖縄が反対しているのは承知している。だが、これまで長年の協議の結果、辺野古移設が唯一可能な選択肢であることが確認されたというのが事実だ」と強調。「沖縄問題は日本政府の国内問題だ」と淡々と表現した。
米政府が早期進展を求める背景には、世論が沖縄問題に向くことへの焦りがある。昨年来、ニューヨークタイムズが社説で「沖縄の懸念に真摯(しんし)に向き合うべきだ」と指摘したことや、米議会調査局が「何十年にもわたる不当な扱いに対する県民の不満は消えそうにない」と日米両政府による構造的差別に言及してきた中で、日本側への早期進展の圧力を強めた。沖縄問題で批判の矢面に立ちたくないという米側の思惑がにじむ。
日米首脳会談前の非公式協議は、進展を約束し、現状を説明する日本政府と議論することさえ不快感を示す米政府という主従構造の中で進められ、日本側が無言の圧力を敏感にくみ取った。
保守系の有力シンクタンク、ヘリテージ財団上席研究員のブルース・クリングナー氏は「沖縄への影響を軽減するために米政府は部隊の移転を認めた。米政府が求めているのは、今度こそ二国間合意に沿って安倍政権が義務を果たすことだ」と述べ、米政府が辺野古移設にこだわる姿勢を説明した。(松堂秀樹)