「屈辱の日」に政府式典 自民、過去に議論


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「首相は沖縄忘れたのか」

 安倍晋三首相がサンフランシスコ講和条約発効の日の4月28日を「主権回復の日」として式典を開く意向を示した。沖縄にとっては日本から切り離された「屈辱の日」と位置付けられており、批判や反発が広がった。自民党内では数年前から同日を祝日に制定する動きがあり、沖縄関係の議員が懸念を示して議論になった経緯があった。

安倍首相の表明に同党関係者からも「党は沖縄の『屈辱の日』を認識しているのに、首相は沖縄を忘れたのか」と困惑の声が上がった。
 2011年秋に行われた自民党総務会。野田毅衆議院議員が4月28日を「主権回復記念日」として祝日に制定することを提案。当時唯一の県選出・出身国会議員だった島尻安伊子参院議員は「沖縄からすると立場が違う。そういう歴史も踏まえてほしい」と慎重な検討を呼び掛けた。
 12年4月28日、同党本部で超党派による議員連盟主催の「4・28主権回復60周年記念国民集会(5・15沖縄本土復帰40周年記念)」が開かれた。来賓に招かれた嘉数昇明元副知事は在日米軍基地が集中する沖縄の現状を説明。「その起源の一つが沖縄県民を日本全体の利益という大義名分で切り捨てた、この日にあると直視してほしい」と沖縄側の受け止めを話した。
 嘉数氏は「党は沖縄の思いを集会で話すことを理解してくれた。どうしてそれが『独立を認識する日』という受け止めになったのか」と疑問を呈した。安倍首相は元首相としてビデオメッセージを流し、本人は欠席した。ある自民党の国会議員は「党は沖縄の思いは十分理解している。首相は沖縄のことが抜け落ちていたのか」と困惑した。
 一方、ある県選出・出身の野党国会議員は「首相の頭に沖縄は基地を移設する存在でしかない」と厳しく批判。別の国会議員も「首相の『日本をとり戻す』という言葉に沖縄は含まれていないとはっきりした」とため息をついた。(宮城久緒)