枯れ葉剤 徹底調査 程遠く 幕引き図る日米両政府


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 米国防総省が沖縄での枯れ葉剤使用や貯蔵をあらためて否定した。猛毒ダイオキシンを含み、深刻な健康被害を引き起こす枯れ葉剤の使用・貯蔵は沖縄にとって重大な問題だが、29ページの報告書は主に公文書や過去の記録を照会したのみ。枯れ葉剤を積んだ輸送船が沖縄に寄港しておらず、使用や貯蔵も記録が発見できなかったとする従来の国防総省の主張を補完するにとどまった。

 日本政府は既に米側から調査結果の報告を受けているが、見解を明らかにしていない。徹底した調査を要請してきた沖縄の意図に反し、問題の早期幕引きを図ろうとする日米両政府の思惑がにじむ。
 沖縄での枯れ葉剤使用・貯蔵は以前から疑惑が持ち上がっていたが、2011年から英字新聞ジャパン・タイムズのジョン・ミッチェル氏が退役軍人の証言や貯蔵時の写真などを報道したことや、本紙の報道などで県内で懸念が広がった経緯がある。
 韓国でも11年5月に枯れ葉剤を埋めたとする元米兵の証言が報道されたが、韓国は約2週間後に米軍の合同調査団を発足させ、土壌調査などに着手。約4カ月後に「微量の枯れ葉剤を検出した」と発表した。
 対照的に、日本政府は同年8月に問題が取り沙汰された後、米政府に合同調査を申し入れず「確認をしている」と国会などで回答。米側は日本政府の要請に応じ、9カ月後に今回の調査を始め、報道から約1年半後に「記録なし」とあらためて伝達した。土壌調査や証言者への聞き取りは実施されず、同じ同盟国に対する米側の二重基準と、日本政府の消極姿勢が浮き彫りになった。
 国防総省は本紙の取材に対し「今後、仮に枯れ葉剤の沖縄での使用や貯蔵を示す証拠が見つかれば、必ず日本政府に知らせ、適切な対応を取る」と述べ、継続的に対応していく考えを示したが、「これまでの報道は正確ではない。9カ月間も調査したが、沖縄での枯れ葉剤の疑惑を裏付ける証拠や文書は発見できなかった」と強調するなど、“調査は尽くした”との姿勢だ。日本政府はこれまで米側に対し強い姿勢で土壌調査など徹底した調査を申し入れていないことから、今回の調査報告に対しても反論する可能性は低い。
 沖縄の枯れ葉剤の問題を追及してきた沖縄・生物多様性市民ネットワークの河村雅美さんは「報告書の公開予定などを外務省に問い合わせたが把握していないようだった。日米の信頼関係に疑問が生じている」と指摘した。(松堂秀樹)