電磁波「不安」7割 空自・与座岳新型レーダー


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 【糸満】糸満市与座の航空自衛隊与座岳分屯基地で、昨年夏ごろから運用されている新型レーダー「FPS―5」から発生する電磁波が健康を害する恐れがあるとして、同市の与座区民から不安視する声が上がっている。

昨年12月、同区が18歳以上の区民501人を対象に実施したアンケートでは、電磁波について「不安である」「やや不安である」と回答した住民が約7割に上った。
 航空自衛隊南西航空混成団は「電磁波の強度は、国の基準に適合した数値となっており、健康への影響はない」との認識を示した。
 アンケートは、生活の満足度などを調査する目的で実施。回収率は53・9%。電磁波に関する設問では、不安視する住民が69・2%に上り、「心配していない」と答えた人は22・6%だった。自由記述では「電磁波が強いので子や孫に生活させたくない」「長期的な疫学的調査が実施されていないので」などの声が寄せられた。
 同レーダーや携帯電話基地局からは高周波電磁波が発生しており、海外の研究機関からは、高周波電磁波が人体へ悪影響を及ぼす恐れがあるとの研究報告が多数発表されている。
 同レーダーは、与座のほか国内3カ所に設置。他県では、住宅地との距離は1キロ以上離れているが、与座の場合は約580メートルと最も近い。
 アンケート結果を受け、同区自治会は2月13日に「レーダー問題対策委員会」を設置した。委員の1人で琉球大学の賀数清孝教授(量子力学)は「国は被害が出ないと動かない。今後、生活する若い人のためにも対策を講じたい」と話した。

<解説>海外で被害報告
 糸満市与座の住民が、航空自衛隊与座岳分屯基地の新型レーダーから発生する高周波電磁波を不安視する背景には、低レベルの電磁波による健康被害が世界の研究機関で報告されていることがある。
 自衛隊は、レーダーから発生する高周波電磁波は、「電波法」や電波に関するガイドライン「電波防護指針」の規制値に適合しており「健康への影響はない」とする。
 だが、賀数清孝琉球大教授は「近年、世界的に問題となっているのは、慢性的に低レベルの電磁波を浴び続けることで人体に影響を与える『非熱作用』だが、指針では全く考慮されていない」と指摘する。
 同指針は、高レベルの電磁波が体内の温度を上げる「熱作用」や「刺激作用」の健康被害を認めるが、非熱作用などその他の作用は科学的根拠がないとして考慮していない。
 一方、世界保健機関の専門組織・国際がん研究機関は2011年6月、携帯電話から発生する高周波電磁波を「グループ2B(発がん性があるかもしれない)」に分類し、なるべく携帯電話に触れる時間を短くするよう提言した。国内では、携帯電話基地局から発生する高周波電磁波が健康被害を引き起こすとして、操業停止や建設中止を求める訴訟が相次いでいる。
 新型レーダーと住宅地の距離は、最も遠い新潟県佐渡市で約5・2キロだが、与座は約580メートル。住民からは立地場所として「不適切」との声も上がる。
 電磁波をめぐる懸念が世界的に指摘される中、国や自衛隊は、よりきめ細かい説明と予防原則に立った対策が求められる。(梅田正覚)

<用語>FPS―5
 糸満市与座の航空自衛隊与座岳分屯基地にこれまであった「FPS―2」を取り壊して設置された新型レーダー。航空機を対象とした航空警戒や日本に飛来する弾道ミサイルを探知・追尾する。糸満市与座のほか青森県、新潟県、鹿児島県の3カ所に設置されている。

与座岳に設置されている新型レーダー「FPS―5」。国内に設置されているものでは住宅地から最も近い=2月21日、糸満市与座