「尖閣棚上げ」日本に有利 孫崎氏が講演


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 会員制の講演会組織「琉球フォーラム」(主宰・富田詢一琉球新報社長)の3月例会が13日、那覇市のロワジールホテル&スパタワー那覇で開かれた。元外務省国際情報局長の孫崎享氏が「東アジアの安全保障―尖閣諸島をどう制御するか」の演題で講演した。

 孫崎氏は、近年、政府が存在を明確に否定している、日中間の尖閣諸島領有権問題の「棚上げ」について、国交正常化交渉に深く携わった外務官僚らの論を基に「棚上げはあった」と解説。棚上げが長引くほど、日本の実効支配が明確化し、「法律上も日本に有利になる」と分析した。
 一方、2010年の海上保安庁の巡視船と中国漁船衝突事件や、12年の石原慎太郎前東京都知事主導による尖閣諸島の国有化などで日中間の緊張が高まったことを背景に、米国が尖閣問題を利用し戦略的に日米同盟の深化に動いたと指摘。
 その一端として、元国務省日本部長のケビン・メア氏が、尖閣問題に関して日本が制空権を取るために、ステルス戦闘機F35の調達計画拡充を指摘している点に触れ「尖閣問題が深まれば、米国の軍需産業にプラスになるということ。あまりにあからさまだ」と、批判した。紛争解決の手段として、ドイツとフランスが資源の共同管理で領土問題を解決したアルザス・ロレーヌ地方や、宗教や政治体制の違いがありながら、経済や安全保障の共同体を構築した東南アジア諸国連合の事例を挙げ「紛争を起こさないためには、協調することが大切だ」と訴えた。

孫崎享氏
尖閣諸島問題についての講演に聞き入る来場者ら=13日、那覇市のロワジールホテル&スパタワー那覇