62年越しに卒業証書 波照間中、冨底さん(76)


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卒業証書を受け取った冨底利雄さん=12日、竹富町の波照間小中学校

 【波照間島=竹富】波照間中学校(仲底善章校長)で12日に行われた卒業式で、戦後の混乱のため卒業できず、証書を受け取れなかった1人にも卒業証書が授与された。

今回62年ぶりに晴れて卒業証書を受け取ったのは波照間在住で農業に従事する冨底利雄さん(76)。
 冨底さんは戦争中、強制疎開地・南見田で13歳の兄が体罰のため亡くなり、島に帰って間もなく両親と、もう1人の兄もマラリアで相次いで亡くなった。生きていくために中学2年の夏休みから石垣に渡り、働き始めた冨底さんは再び学びやには戻れなかった。
 仲底校長がこの事情をくみ、県教育委員会、竹富町教育委員会に諮り、学籍簿の卒業年度に「特1号」として記載、その番号で授与を行った。
 式には同級生も駆け付け、3年生の後に冨底さんの名前が呼ばれると会場から温かい拍手が送られた。(新城あやこ通信員)