『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』 日本の属国的姿勢を指摘


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『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』前泊博盛編著 創元社・1575円

 1952年4月28日のサンフランシスコ講和条約の発効日を「主権回復の日」として政府が記念式典を開催することを決めた。しかし、この日は沖縄、奄美、小笠原などが本土と完全に切り離されて米国の施政権下に置かれた「屈辱の日」でもある。安倍総理としては、憲法改正と国防軍創設という目的を達成するために「日本独立の日」という世論形成の必要性があったのだろう。しかし、72年まで米国の施政権下に置かれ、本土復帰後も米軍による事件・事故の続発に悩まされてきた県民にしてみれば、沖縄の歴史を無視したやり方に怒りを覚えるのは当然だろう。

 日本政府からも差別され続けてきた沖縄は、オスプレイの強行配備や普天間基地の代替としての辺野古新基地建設まで押し付けられようとしている。日本政府は事あるごとに、沖縄の基地負担軽減を繰り返してきたが、沖縄の現状を見れば「嘘(うそ)の上塗り」でしかなかったことは明らかだ。日本は本土独立と引き換えに沖縄を米軍の支配下に置き、米軍基地の治外法権的な自由使用を認めたのである。
 その歴史的な根拠を明確にしたのが前泊博盛氏の「日米地位協定入門」である。表紙には「本当は憲法よりも大切な」日米地位協定という「戦後日本最大の闇に迫る」と明快に記されている。沖縄がいまだに米国の属国か植民地のような不平等下に置かれている理由は、旧安保条約と同時に発効した「日米行政協定」が目的とした「日本の全基地化」「在日米軍基地の自由使用」によって取り決められた国家間の縛りが元凶なのだ。
 野田佳彦前総理がオスプレイ強行配備について問われた際、「米軍にどうしろ、こうしろとは言えない」と述べた。しかし、野田発言は現在の日本の対米自立すら疑わしいことを率直に語ったのだ。いくら危険なオスプレイでも、日米関係上は単なる機種の変更にすぎず、米国が「接受国通報」すれば、配備できるのだ。こうした日本の属国的な姿勢は敗戦処理段階から、今日のTPP参加まで一貫した対米追従の姿勢であることを本書は鋭く指摘しており、県民必読の一冊である。
 (岡留安則・ジャーナリスト)
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 まえどまり・ひろもり 1960年生まれ。琉球新報論説委員長を経て、沖縄国際大学大学院教授。著書に「沖縄と米軍基地」「もっと知りたい! 本当の沖縄」。