「米軍被害 反対しない」施設局、高専に文書要求 初代校長・糸村氏証言


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米軍基地を原因とする沖縄高専の騒音問題に対し「学習環境を守ってほしい」と語る糸村昌祐氏=30日、北中城村仲順

 那覇防衛施設局(当時)が2002年7月、琉大内に設置された国立沖縄工業高等専門学校創設準備室に対し、高専に隣接するキャンプ・シュワブから騒音・震動などの問題が出ても「異論・反対等はしない」とする文書を提出できないか打診していたことが30日、準備室長・沖縄高専校長を務めた糸村昌祐氏(70)の証言で分かった。

当時想定されたヘリや不発弾処理の騒音に加え、糸村氏は昨年配備されたオスプレイによって「さらに環境が悪化しているだろう」と指摘する。4月1日で配備半年を迎えるオスプレイなどの基地被害から「学ぶ環境を守ってもらいたい」と訴えた。
 糸村氏によると、施設局は、基地の隣に学校が建設されることを米軍が不安視していると説明。ヘリコプターや実弾演習、不発弾処理に伴う被害を問題にしないよう当事者(高専)に確認したいという内容だった。
 施設局は「騒音問題等が懸念される地区であることを承知しており」「文部科学省が適切な措置を講ずると認識」などとする文書案を提示した。同文書に回答する形で高専から「異論・反対等しない」と言質を取り、米軍に提出する予定だったという。
 糸村氏は沖縄高専設置に当たり、国立学校設置法改正案付帯決議で「(政府が)学生の安全を第一に万全の配慮をしつつ計画を進める」としたことを挙げて回答を拒否した。その後施設局からの打診はなかった。
 糸村氏は高専に赴任後「昼夜問わずヘリが飛び、朝から実弾射撃の音が聞こえ、教員宿舎では夜中に目が覚める人もいた」と懸案は現実だったと振り返る。08年に退職し、1年前から住む北中城村では、普天間飛行場から北部の訓練場に向かうオスプレイが自宅上空を飛ぶ。「かなり上空を飛んでも騒音はうるさい。着陸帯が近くにある高専ではもっとひどいだろう」と気遣う。
 当時、県から推薦された高専の候補地は辺野古1カ所しかなく「基地と抱き合わせ」(糸村氏)の学校建設に「学生たちが犠牲になった」と今も心苦しさが残る。
 普天間飛行場の辺野古移設が実現すれば「さらに環境はひどくなる。オスプレイも移設そのものも反対だ」と語る糸村さん。「政府は『振興策と移設問題がリンクしていない』と言うなら基地問題と切り離して、学習環境を守ることを優先させてほしい」と強調した。(金城潤)