ウチナーグチ版「吾輩は猫である」完結 前作から11年


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「ウチナーグチのリズムを大切に翻訳した。自信作だ」と話す宜志さん=琉球新報中部支社

 【沖縄】夏目漱石の作品のウチナーグチ訳に取り組んできた宜志政信さん(67)=沖縄市=が、名作「吾輩は猫である」の翻訳版「吾(わん)んねー猫(まやー)どぅやる」完結版(新星出版)をこのほど出版した。原作本の第1章から6章を訳した前作から11年余。残りの7章から11章までの訳を終え、出版にこぎ着けた宜志さんは「ウチナーグチを知らない若い人に、原作と読み比べながら味わってほしい」と話している。

 前作の出版は2001年末。興洋電子(那覇市)会長の業務の合間を見て漱石作品の翻訳作業を続けてきた。最初に挑んだのは「草枕」だったが「高尚すぎて途中でハンナギタン(放り投げた)」。その後、親しみのある作品に取り掛かり、03年には「坊っちゃん」の翻訳版を出版した。
 原作本の書かれた背景を知るため、東京の古本屋街で漱石研究書を収集し、翻訳作業に生かした。「原作は社会批評を含んだものだけに翻訳もひねった。漢詩や四文字言葉はズバリの訳語がない場合、意訳して説明することもあった。今回の翻訳本は自信作」と語る。
 翻訳本が評判を呼び、10年ほど前から警察学校の生徒にウチナーグチを指導する。「10年前の生徒はまだウチナーグチを理解したが、現在の生徒は外国語のように聞いているようだ。簡単な単語を取り入れて話すよう指導している」という。
 ウチナーグチが持つリズムを尊重した翻訳に徹してきた。「標準語は論理的であるが、ウチナーグチでしか表現できないものがある。学術性よりも、そのリアリティーを大切にしたかった」と話す。
 「吾んねー猫どぅやる」完結版は1429円。宜志さんは多くの高校生にウチナーグチの楽しさに接してもらうため、県内高校に寄贈する考えだ。
 問い合わせは興洋電子与那原営業所(電話)098(946)9801。

英文へ→Gishi publishes Uchinaguchi version of Soseki’s I am a Cat