県「固定化懸念」を強調 小野寺防衛相来県


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統合計画で「速やかな返還が可能」とされたキャンプ瑞慶覧西普天間地区を視察する小野寺五典防衛相(中央)=6日

広がる政府への疑心
 来県した小野寺五典防衛相は、嘉手納より南の米軍施設の統合計画で返還時期を明示した成果を強調したが、普天間飛行場の名護市辺野古移設と、その他の施設の返還が事実上パッケージ化しているとの指摘が首長らから続出し、火消しに回る場面もあった。

一方、仲井真弘多知事は、計画で明示された普天間の返還時期が「長すぎる」と主張。固定化への懸念から県外移設を求める立場を明確にするなど、普天間をめぐる県と国の主張は真っ向から食い違った。

閣僚間の温度差
 小野寺氏は帰任前の会見で、パッケージ化について「昨年の日米安全保障協議委員会(2プラス2)、日米合意で切り離されたと思っている」と明確に否定した。知事との会談でも「(返還予定の)13地区すべて独立したスケジュールで、こちらが動かないからあちらが動かない、というのはない」と強調した。
 だが、3日に来県した菅義偉官房長官は辺野古移設を推進する立場を際立たせ、「県民の皆さんにご理解いただけるよう嘉手納より南の返還も含めて結論を出したい」として、同計画への理解が辺野古移設につながるとの認識を示した。
 参加した首長は小野寺氏の発言は「信用できない。統合計画における普天間の明示は、パッケージ以外の何物でもない」と指摘。火消しのためのパッケージ論否定だったが、閣僚間の発言の差異や温度差によって、政府への疑心がより広がった面も否めない。

固定化への懸念
 知事は会談後の会見で、普天間返還が計画で「2022年またはその後」と明記されたことについて「移設までの間、固定化するのと一緒だ」と指摘し、あらためて県外移設を求めた。わずか5分ほどの会見で、普天間固定化への懸念を4回繰り返した。
 発言には返還・統合計画を契機として、国に県外移設を迫る狙いがある。県幹部は普天間の移設が9年後となっていることに触れ「固定化阻止や『早期の宜野湾市民の安心安全確保』を訴えることが国に県外移設を迫る最大の論拠となり得る」と論理付ける。あくまでも県外移設の立場は崩さない構えだ。
 これまで政府は「普天間の固定化への懸念」を強調し、辺野古への移設を求めてきた。これに対して県も知事が繰り返す「県外移設の方が早い」という主張を堅持し、「普天間の固定化への懸念」から県外移設を模索する方針だ。辺野古移設に向けた埋め立て申請書が提出される中、普天間をめぐる県と国との攻防は一層激しさを増しつつある。(池田哲平)