長包メロディー、新たな輝き 琉球交響楽団定期演奏会


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声楽ソリスト、合唱団とともに「えんどうの花」を演奏する琉球交響楽団=3月30日、浦添市てだこ大ホール

 琉球交響楽団(祖堅方正代表)の第23回定期演奏会が3月30日、浦添市てだこホールで開かれた。宮良長包生誕130年を記念し、長包作曲の22曲をオーケストラで演奏した。指揮は大友直人。編曲は與儀享、高宮城徹夫、シバミツ。

3人はシンプルな歌曲として歌い継がれ、譜面が戦火で消失していることも多い長包メロディーの旋律を尊重しつつ、イメージを最大限に膨らませて編曲。作曲家たちの独創的な解釈が加えられることで歌の魅力がさらに引き出され、新たに輝きを増した曲の数々を、4人のソリストや合唱団との調和によって描き出し、来場者を魅了した。
 冒頭は、同楽団が2月に石垣で初公演したのを機に與儀が作曲した「石垣」を演奏。長包の故郷である八重山の空に吹く、温かな南風を思わせるメロディーで会場を包む。「大鷹小鷹」「春小雨」などは知念利津子(ソプラノ)がさわやかな歌声を響かせる。
 古橋郷平(テノール)は情熱的な色彩を帯びた旋律の「赤ゆらの花」などを歌う。「泊り舟」はもの悲しい歌をオーケストラの重奏が引き立たせる。
 「桑の実」などを歌った兼嶋麗子(メゾソプラノ)は、土着の要素の濃い歌詞ながら、イタリア歌曲の深い陰影をも思わせる奥行きある歌声を響かせる。仲本博貴(バリトン)は「首里古城」で荘厳さをたたえる歌声を聞かせ、「ふる里」で郷里の大地や海の波涛と響き合うような曲想を描く。
 打楽器が打ち鳴らされる勇壮な「唐船」などは浦添少年少女合唱団が元気よく歌い、「八重山音頭」などは琉響合唱団と沖縄男声合唱団が味わい深い歌声を調和させた。ビオラ奏者の菅沼準二が円熟の演奏を聞かせた「汗水節」など、オーケストラのみの曲も独特の味わいを醸し出した。
 「だんじゅかりゆし」「なんた浜」など長包の代表曲も演奏。最後の「えんどうの花」は4人のソリスト、合唱団を含め、出演者全員が登壇。来場者と声を合わせ、郷土の作曲家が残した名曲を起点に繰り広げた創造性あふれるコンサートを締めくくった。(宮城隆尋)