米グアム移転費 予算計上、ペース鈍く


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

「負担軽減」実現に懸念

 米国防総省は2014会計年度の予算案に、前年度比約3倍となる8600万ドル(約86億円)の海兵隊グアム移転事業費を計上した。日本政府の普天間飛行場移設に向けた埋め立て申請などに呼応し、米側も再編前進のメッセージを送ったように映る。しかしグアム移転事業の米側負担総額55億ドル(5500億円)から見ると、わずかにすぎない。

米側はグアム移転完了時期を2020年と説明しているが、この予算計上ペースでは実現にはほど遠く、沖縄の「負担軽減」も空手形となる懸念をはらむ。
 グアム移転事業に米側がこれまで計上した予算は合計5億ドル弱。移転費総額86億ドルのうち、米側負担55億ドルの1割に満たない。
 10会計年度は3億ドルを計上したが、11会計年度は議会から要求額の7割を削除され、最終的に1億ドルだけが認められた。12会計年度は全額削除。13会計年度は2年連続の全額削除こそ回避したが、2600万ドルにとどまった。
 14会計年度の8600万ドルは前年度からは「大幅増」だが、それ以前よりも低水準で、移転をめぐる米側の混迷は続いている。
 日米両政府が5日に合意した在沖基地の返還・統合計画では、グアムなど海兵隊の国外移転を条件に、キャンプ・キンザーの一部やキャンプ瑞慶覧の返還が計画された。キンザーは「25年度またはその後」に返還可能と明記したが、グアム移転が滞れば返還も実現しないことになる。
 在沖海兵隊のグアム移転は12年4月の米軍再編合意の見直しで、「司令部要員とその家族の計1万8千人」だった移転対象者を「戦闘部隊の約4千人」に変更した。だが移転数の大幅縮小にもかかわらず、米側は日本側に物価上昇分として31億ドルの負担増額を認めさせた経緯がある。
 米軍は中国のミサイル能力向上を背景に、そのリスク分散を図るためグアムやハワイ、オーストラリアなどへの海兵隊の分散駐留を進めているが、グアム移転費の確保に苦慮しており、いずれ日本政府にさらなる負担増を求める可能性もある。(島袋良太)